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漆器とは、木材を加工して作った素地(木地)に、漆の木から採取される樹液(漆)を塗って仕上げた工芸品のこと。現在、23 の産地でつくられる漆器が、国の「伝統的工芸品」に指定されている。中でも福島県会津若松市、喜多方市などで生産される漆器は「会津塗」と呼ばれる。

会津塗の起源は室町時代に遡り、この地域で力のあった一族が漆の木を植えることを推奨したことが始まりだという。安土桃山時代に領主・蒲生氏郷によって近江(現在の滋賀県)の漆器職人が呼び寄せられ、その技法が会津に広まることで、会津の漆器づくりは進化を遂げ、漆の栽培から加飾までを一貫して行う一大産地となっていった。

会津塗の最大の特徴は、多彩な塗りと加飾の技法であるといえるだろう。錆漆を用いた重厚感のある「鉄てつ錆さび塗ぬり」や、凹凸を作った下塗りに色漆を塗り、まるで虫が食ったような斑点の模様ができる「金きん虫むしくい塗ぬり」、木目と艶が美しい「木地呂塗」など、様々だ。

会津塗の生産を行う関美工堂は、昭和21(1946)年に関勇記氏によって創業され、昭和27(1952)年に国内で初めて「楯」を生産した企業だ。もともと東京の表彰記念品メーカーに勤めていた初代が、空襲の影響で故郷の会津に疎開した際に、「会津塗」の技術をいかして業界に恩返しができないかと考え、楯を開発した。創業以来、表彰記念品全般や一般漆器、全国の一般企業や行政からの依頼に応じた特注加工品など、様々なものづくりをしてきた。
現在は三代目の関昌邦氏が代表を務め、創業の原点である「漆」に回帰。「NODATE」や「BITOWA」、「urushiol」など、今まで培ってきた伝統的な会津塗の技術を用いて、革新的なブランド・製品づくりに取り組んでいる。

漆製品は高級品であるが故、特別なシチュエーションで使うべきものという先入観がある。そのイメージを根本から覆したのが「NODATE」である。ブランド名のNODATEは、屋外で行う茶事「野の点だて」が由来だ。野外でも楽しめる漆製品が誕生したきっかけについて、関昌邦さんにお話を伺った。
「2008年頃、なかなか自分が使いたいと思うような心地良いアウトドア製品に出合えませんでした。それならまず自分用に試作してみようと思ったことが、NODATEが生まれたきっかけです。漆器は、軽く丈夫で、防水性・耐熱性に優れ、塗膜が溶解することもない万能な器です。また、劣化した場合も、漆を塗り直せば半永久的に使用することができるサステナブルな天然素材。日本人が1万年以上も前から暮らしの素材として取り入れ、継承してきた理由はこうした性能面の価値にあるのだと思います」。

NODATEは屋外で使うことが前提の為、艶塗りではなく、漆塗りの原点ともいえる「拭き漆(別称・摺り漆)」で仕上げられている。カジュアルに使うことができ、修理も容易だ。
「会津塗の職人は分業制です。木地は、『丸木地師』と『板木地師』に分かれます。丸木地師は轆轤を回しながら木を削り出し素地を作ります。板木地師は、板を切ったり削ったりして組み上げ重箱などを作ります。また、塗師も分業で、木地を回しながら塗る『丸塗師』、丸くない木地を塗る『板塗師』に分かれます。仕上げに絵柄を付けるのは『蒔絵師』。色漆で描き完了することもあれば、さらに加筆して本金や本銀の粉末を蒔き付ける場合もあり、そうした材料の使い分けや作業の順番で遠近感のある図案を表現していきます」。

一つの製品に対して、何人もの熟練した職人が関わる「会津塗」。大量生産の品には出せない奥行きのある美しさや、その機能性は、彼らの手によって作り上げられている。
CRAFTS
NODATE mug / NODATE mug art work by MHAK

plate R100 / serving

bento for picnic

syu-migaki R30(UZU, NAWA, YUI)

NODATE ONE HEART –KAKIKO

chabu 50(紅緋)

Photography KENGO MOTOIE
Edit & Text YURIKO HORIE
写真提供:関美工堂
こちらの情報は『CYAN ISSUE 017』に掲載されたものを再編集したものです。