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幸福感を高めて巡りも促進 果実が与えてくれる恩恵

 果実の精油というと、すぐ思い浮かぶのはオレンジやレモンといった柑橘類。果皮の部分に精油が含まれ、昔は手作業で、研磨板を使って果皮を擦り、出てきた液体を集めて精油を抽出していたそう。現在は機械圧搾が主流となり、安定して楽しめるようになった、ジューシィで気分を明るくしてくれる柑橘系の香りは、日本でとくに人気が高い。精油が持つ心理的な作用や身体的な作用もライフスタイルに取り入れやすく、価格も比較的手頃。但し、柑橘類が持つ光毒性(紫外線に当たることで皮膚トラブルを起こすこと)についても知っておくとよりベター。また、柑橘類以外の植物にも、果実の部分から精油が抽出されているものがあることは、一般的にあまり知られていない。そこで今回は柑橘類から2つ、そのほかの植物から2つをセレクト、果実の香りの魅力をひも解いてみたい。

果実の代表ともいえる柑橘 その成分的な魅力と注意点

 果実の精油の多くを占めている柑橘系は、フレグランスの世界ではシトラスノートと呼ばれている。シトラスという言葉の響き自体にも爽やかな余韻があるが、実際に柑橘系の精油には、体内の巡りを促したり、気持ちをリフトアップする、といった共通点がある。
「柑橘類は、農作物としては大量に栽培されていますが、エッセンシャルオイルの生産量となると、そのシェアはさほど大きくありません。リフレッシュ感のある香りの素、となっているのは柑橘系の精油の70%~90%を占めるd-リモネンという化学成分です。d−リモネンは油汚れに効果的です。柑橘系の香りはキッチンに置いてあっても違和感がないため、ナチュラルクリーニングを実践される方は、クエン酸水にレモンの精油を落として水まわりのお掃除に使ったり、油汚れの落ちがアップするのでオレンジの精油などはお掃除用洗剤によく配合されています。化粧品では、柑橘類の精油がセルライト対策のボディケアアイテムなどによく配合されています。」

「このように香りも効能も親しみやすい柑橘系の精油ですが、光毒性成分であるベルガプテンを含んでいるため、取り扱いには少し注意が必要です。とくにベルガモットは光毒性が高く、過去にはベルガモット原液を肌につけて日光を浴びたらトラブルが出てしまった、という報告もありました。そのため、少し前までは柑橘系の成分が使われている化粧品の注意書きに、使用後に陽射しや強い光を浴びないように、といった一文が書かれていました。そのほかの柑橘類にも光毒性はありますが、そこまでリスクは高くありません。そして現在では、ほとんどの柑橘系の精油はベルガプテンフリーといって、光毒性成分が製造工程で抜かれています。ベルガモットは、リフレッシュにもリラックスにも働いてくれますし、調香する際にもどんな香りとも合わせやすい、持っていると何かと重宝する香りです。しかし、もし海外などでベルガモットの精油が安く販売されていたり、透明ではなくやや色のついたベルガモット精油に出会った場合は、念のためベルガプテンフリーかどうか確認することをおすすめします」

さまざまな柑橘の魅力と セリ科やコショウ科の果実

 先人は、柑橘系の香りをどのように楽しみ、暮らしに活かしてきたのだろうか。
「いくつかの柑橘系の故郷は、インドのアッサム地方といわれており、アーユルヴェーダやヒンズーの儀式で古くから使われていたそうです。とくにレモンの殺菌作用の高さは古くからわかっていたようで、16 世紀頃に黒死病が流行った時には、空気浄化の目的でロウソクにレモンの香りを足して灯していたという話もあります。レモンの香りはリフレッシュ度が高く、朝に使うと目覚めを良くしてくれたり、免疫力や集中力を高めたい時などにも活躍してくれます。また、同じインドのアッサム地方原産であるマンダリンの精油は、柑橘類の中でも作用が穏やかなことで知られています。お子さんや妊婦さんにも安心して使えるので、ニールズヤード レメディーズでは妊婦さんの妊娠線ケアのためのオイル『ストレッチマークオイル』に使用しています。そのほかラベンダーとマンダリンのブレンドは、ベッドに入る前に嗅いだり焚くとやさしい気持ちで眠りにつけておすすめです。もう1つ、諸説ありますがアジア原産といわれているのはグレープフルーツ。グレープフルーツの精油には多彩な働きがあり、中でも近年イギリスでは日照時間が極端に少なくなる冬に強まる鬱症状 『SAD(季節性感情障害)』に対し、グレープフルーツの香りを嗅ぐと幸せホルモンセロトニンの分泌が促され、抗うつ効果を期待できるという研究報告が話題になりました」

 一方で、果実から抽出された精油の仲間には、柑橘類以外、意外なことにコショウ科のブラックペッパーやセリ科のコリアンダー、フェンネル、キャラウェイなども含まれる。
「ブラックペッパーは、医療関係でアロマセラピーを研究されている方や看護師さんが活用している精油のひとつ。ブラックペッパーの香りを嗅いで脳を刺激すると、高齢の方などに起こりやすい誤嚥(食べ物を飲み込む時に誤って気道に入ってしまうこと)を予防、改善されるといわれています」
スパイスとして耳馴染みがあり、種子由来と思われがちなそれらの精油もまた、柑橘類と同様に、実は成熟のピークである果実として、興味深い力強さを秘めているのだ。

Teaching from…

鎮西 美枝子先生(ニールズヤード レメディーズ)
ホリスティックスクール ニールズヤード レメディーズ講師、AEAJ 認定アロマセラピスト、AEAJ認定アロマセラピーインストラクター、JAMHA 認定ハーバルセラピスト、JAMHA 認定ハーバルプラクティショナー。JAMHA 認定日本のハーブセラピスト。アロマセラピーの歴史についての造詣の深さはもちろん、精油を用いた調香にも詳しい。

ホリスティックスクール ニールズヤード レメディーズ
アロマセラピースクールの先駆として、1996 年に開設。精油やハーブを用いた自然療法を本格的に学ぶ講座や、人気の「はじめてのアロマ香水」をはじめ、実践しながら楽しく学べる各種の1Day 講座など、充実した内容が魅力。現在は表参道校・大阪校があり、アロマセラピーの基礎を学べるベーシッククラスは両校にて毎月開講中。表参道校では今年9月より待望の夜クラスもスタート。アロマテラピー検定1、2級に対応しているので資格試験を目指す人にもおすすめ。

Edit SATORU SUZUKI
Text KUMIKO ISHIZUKA

こちらの情報は『CYAN ISSUE 023』に掲載されたものを再編集したものです。

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