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ブランドの始まり

 ディセンシアは、ポーラ R&M 研究所の研究員だった創業者の想いからスタートしている。センシティブな肌に悩む親族の姿を目にしてきた彼は、学生の頃から “アトピー性皮膚炎や皮膚の疾患など、深刻な悩みを持つ女性の肌をなんとかしたい” という強い気持ちを持っていたのだという。「なかなか表立って話されることではないかもしれませんが、アトピーなどのシリアスな肌悩みを抱えている方って実はとても多いんです。ですが当時、敏感肌の方が肌悩みを解決したいと思ったときの選択肢といえば、皮膚科に行くか、ごく限られた専門コスメしかなかった(DECENCIA 代表取締役社長 山下慶子さん、以下Y)」

 化粧品とは本来、“もっと美しくなりたい” という前向きな動機で使われるもの。一聞すると当たり前のようだが、敏感肌を持つ女性たちのそういった感情に寄り添うスキンケアアイテムは、当時の化粧品業界にはほとんどなかったのだ。例え皮膚科に行ったとしても、それぞれの美意識に沿ったアドバイスは殆どもらえない。肌は人生のクオリティに影響を与えるもの。肌が原因で自信を持てず、ふさぎ込んでしまう女性も少なくない。そんな敏感肌コスメの状況を打破することに果敢にチャレンジした研究員は、日々研鑽を積んだ。

 そして 2004 年、遂に敏感肌・アトピーに有用な技術「ヴァイタサイクルヴェール 」を開発した。これは、板状粉体のベントナイト※が肌表面をぴったりと覆うバリア膜を形成し刺激から角層を守るのと同時に、贅沢な保湿成分を肌に与えてくれるという敏感肌にとって革新的な特許技術だ。

 2007 年1月になると、この独自技術を多くの人の役に立てたいという想いから、「株式会社 decencia(ディセンシア)」が設立された。実は当時、ポーラオルビス HD グループ内のベンチャー制度の公募が始まっていた。これに応募したディセンシアは、社内ベンチャー第1号という形で承認を得、スタートを切った。ブランド名は、【decency(品位・礼儀)+ia(女性名詞)】が由来。正しいものを正しく、誠実なものを誠実に。まっすぐにその美を追求したい、という理念を元に作られた造語である。

デビューアイテム「つつむ」シリーズ

 ブランドが設立された 2007 年にデビューしたのが、ベーシックケアシリーズ「つつむ」だ。「つつむ」という名称には、“乱れがちな敏感肌をやさしく包んで、肌本来の美しさを取り戻す” という意味が込められている。デビュー時のアイテムは、クリーム2品のみ。「ヴァイタサイクルヴェール 」はクリームという剤形ではじめて実現する技術のため、その特性を活かした。それまでの敏感肌化粧品は、“肌をうるおいの膜で守りましょう” といったアプローチのものが多く、肌の刺激になる可能性のあるものは極力入れないレス処方のものがほとんどだった。しかし、「つつむ」シリーズは今までのそれとは一線を画すもの。乱れてしまった角層の代わりに物理的な擬似角層をつくり、敏感肌の原因そのものを寄せ付けないという積極的な処方だ。

 発売直後の反響は、そこまで大きくなかった。実は、ローンチキャンペーン等も行わず、マス広告も敢えて打たなかったのだ。それは、“本当に悩んでいる人の深い部分に訴えたい” という願いが根底にあったから。「デビューしたこの時期にディセンシアに出会い、未だにファンでい続けてくれているお客様もいます。広く浅くではなく、より深いところで繋がりたいという私たちの想いと、新しい切り口の敏感肌コスメを信じてくれた方々との関係を長く続けられていることは、ブランドにとってとても大きな財産です(Y)」

「つつむ」:外部刺激から肌を徹底的に守り、敏感肌に不足しがちなうるおいを与えながら整えるベーシックケアシリーズ。 高いうるおい力で敏感な肌をやさしく包み、強く美しい肌へと導いてくれる。

エイジングケアシリーズ「アヤナス」

 デビューから4年後の 2011 年には、エイジングケアシリーズ「アヤナス」が発売された。アヤナスは、アンチエイジングという機能性をプラスした言わば “攻める” 敏感肌コスメ。これまで保守的なものがほとんどだった敏感肌コスメ市場に新しい世界を切り開いた。「お客様と対話を続けている中で、“敏感肌化粧品には美しくなる期待を持てない“、という想いが根強くあることに気づきました。友達に使っていることを知られるのが恥ずかしいというような後ろめたさを持っている方もいた。それこそ、肌の調子がいい日は他の化粧品を使うというような、レスキューコスメ的な位置付けだったんです。彼女たちのそんな声に耳を傾け続けているうちに、ハリやツヤのような美しさへの期待ももたらすことのできる敏感肌用コスメを作りたいという想いが強くなりました(Y)」

 ベンチマークが存在しない世界に新しいものを生み出す作業は困難の連続だったが、研究の結果 “敏感肌は健常肌よりも 11 歳老けて見える” という敏感肌特有のエイジングメカニズムを発見。バリア機能が低下した肌内部では微弱炎症が繰り返し起こり、コラーゲンが破壊されてしまうというメカニズムを解明した。単純な加齢によるコラーゲンの劣化だけではなく、微弱炎症がトリガーとなり、コラーゲンの減少が過剰に起きてしまうのだ。つまり、敏感肌はエイジングのリスクも抱えていることになる。この研究結果をもとに、“敏感肌の人でも安心して使え、かつ手応えのあるエイジングケアコスメ” を世に送り出すためのプロジェクトが始動。試作が重ねられ、アヤナスシリーズが誕生した。

 アヤナス発売と同時に、ブランドステートメント “敏感肌は、もっと美しくなれる” も制定。敏感肌を冠に置きながら、美についてもきちんと語っていこうという宣言だ。「それまでは、保守的で地味なパッケージのものしか選べないと思っていたけど、これを使ってもいいと思うと気持ちが高まるって言ってくださる方が多かったです。私たちの方が、逆に怖がっていたのかもしれない(笑)。チャレンジすることに不安もありましたが、お客様に背中を押していただいくことも多かったです(Y)」

「アヤナス」:乾燥肌特有のエイジングメカニズムに着目したプレミアム エイジングケアシリーズ。ハリの低下などにアプローチし、ピンとした艶美肌へと導く。

美白ケアシリーズ「サエル」

 アヤナスがデビューした翌年の 2012 年には、美白ケアシリーズ「サエル」が発売となった。サエルでは、“敏感肌はシミができやすい” という特有のメカニズムに着目。バリア機能が低下した肌内部で繰り返す微弱炎症がメラニンを過剰に生成するということに着目したアプローチは、業界初だった。アヤナスで実現した敏感肌専用のエイジングケアとともに、美白ケアアイテムも実現させたいという想いが開発の出発点となり、安全性が高く、かつ美しさも叶えるラインナップが強化された。これを機に、ディセンシアはレスキューコスメではなく、美を叶えたその先も選ばれ続けるロングライフブランドへと成長を遂げた。

「サエル」:ストレスにより加速するシミのメカニズムに着目したホワイトニングケアシリーズ。シミやくすみにアプローチし、透明感のある肌へと導く。

“敏感肌は、どこまでも美しくなれる”

ブランドのリステージ

 2016 年、女性の肌に大きな変化が見られるようになったことがきっかけとなり、ディセンシアはブランドリステージを行った。この頃、時代の流れとともに生き方が多様になり、自分らしくイキイキと生きる女性が増えた一方で、肌荒れに悩む女性も同様に増えていたのだ。そこでディセンシアでは、ストレスによる肌荒れのメカニズムを独自に解明。ストレスによる皮膚温の低下が、バリア機能の低下も引き起こすという新知見を得た。

 この知見を当てはめて考えると、現代型敏感肌の多くは、ストレスから引き起こされていたということになる。つまり敏感肌は、今を生きる現代女性の誰にでも起こり得ることであって、けして特別な肌ではないのだ。ディセンシアではこの考えをもとに、敏感肌は感受性が豊かで繊細な肌であると位置付け、ブランドステートメントを “敏感肌は、どこまでも美しくなれる” へ刷新。さらにブランドロゴも小文字から大文字に変更。斜体がかったスタイリッシュなデザインへとリニューアルし、胸を張って前向きに生きるポジティブな女性を表現した。

「アヤナス」リニューアル

 ストレスによる肌荒れのメカニズムを解明したディセンシアは、独自のストレスケア成分を開発し、同時にエイジングケアシリーズ「アヤナス」をリニューアル。敏感肌が引き起こされる原因にもう1度立ち戻り、ストレスの影響を受けゆらぎがちな年齢肌に着目したプレミアムなエイジングケアとして新たな進化を遂げた。「変化するということは、成長をしていくということ。実はお客様からは、“ようやく出会えた化粧品だから、ずっと変わらないでいてほしい” というご意見もいただきましたが、それを上回る良い商品を出せばきっと喜んでいただけると確信していました。結果的に、アヤナスリニューアルのチャレンジは、ディセンシアにとって大変重要なものとなりました。時代にアジャストしていきながら、さらに進化させていくには、このタイミングがベストだったと思っています(Y)」

 アヤナスのパッケージカラーは、当時の敏感肌コスメではタブーとされていた赤。炎症を想起させる懸念もあったが、思い切って採用に至った。「赤は情熱の色。日々、胸を張って生きる女性を後押ししたい、という気持ちが込められています。また、アヤナスはキャップのカッティングを斜めにしているのですが、これは敏感肌を断ち切って、自分で人生を切り開いていこう、という希望を込めています(Y)」コスメはファッションに近いものがあり、使っていることが誇りに思えるか、自信に繋がるかという点も大切になってくる。だからこそ、コスメには機能以外にもエモーショナルな部分に訴える役割が必要だとディセンシアでは考える。「今は、自分で決めて、好きな生き方ができる時代。そんな自立した考え方を持つ女性を化粧品のチカラで鼓舞できたら嬉しいし、このパッケージを見ると元気になれる、という敏感肌ブランドがひとつくらいあったっていいんじゃないかなと思っています(Y)」

 アヤナスは今年の 10 月に、敏感肌化粧品初の抗シワ対応のアイテム “アヤナス リンクルO/L コンセントレート” を発売。その使い心地と期待を超える使用感は、大きな話題を呼んだ。

アヤナス リンクルO/L コンセントレート

ハイプレスシリーズ「ディセンシー」

2020 年、ディセンシアのハイプレスシリーズ「ディセンシー」がプレミアムスキンケアとしてライン化される。ディセンシーシリーズでは独自技術により、敏感肌の角層を 24 時間で立体化。寝る前に使用すれば、健康で美しい肌と同様の立体的な角層を、翌朝には自身の肌でも感じることができる。通常のスキンケアが新幹線だとすれば、ディセンシーは飛行機のような速さで肌を明るく導いてくれるのだ。

 ディセンシーはデザインもシンプルで決して派手さのある見た目ではない。しかし、最高品質で最先端の技術が注入されており、より本質的なスキンケア体験を堪能することができる。「製品作りで特に苦労するのは、実はテクスチャーです。化粧品を使っていただく上でとても大切なのは、習慣にしてもらうこと。1回使っただけで終わるのでは無く、使い続けていただくことに意味があります。ですから、毎日気持ち良く使ってもらえるよう、テクスチャーには細心の注意を払っています。敏感肌の方が使って安心できる浸透速度を意識して、次のアイテムを重ねた時の心地よさや、ベタつかないギリギリのラインを狙います。ディセンシーは使い心地もピカイチ。特にローションは1度完成しかけたものをリセットして1からやり直したんですよ(Y)」

 パッケージカラーのグレイは誰にでも合うダイバーシティカラー。置く場所や性別を選ばないインテリジェントな佇まいは、多様性とミニマムな価値観が共存する今の時代にしっかりとフィットしている。

ディセンシー ローション

ディセンシアのこれから

 「これからも常に半歩先を見据えながら、満足いただける商品を開発していきたいと思っています。お客様とのリレーションをより深めていきながら、時代とお客様の変化に1番に気づけるブランドでありたいです(Y)」

 敏感肌を扱うということは、誰かの人生を扱うこと。肌の悩みが深いほど、内側にこもってしまう女性も多い。本来のパーソナリティや好奇心を、肌が原因で発揮できないのは人生において大切なチャンスを逃してしまうことに繋がるかもしれない……。「敏感肌だからアンラッキーだった、ではなくて、敏感肌だからアプローチが違うだけ。自分の感性や好きなもの、自分らしさを捨てる必要はありません(Y)」

 何事もポジティブな方に光を当てれば、それはきっと、その人の強みになる。ディセンシアは、前を向いて自分らしく進んで行きたいと願う女性の切なる思いに、技術力と研究力で応え続けてくれるだろう。

 今まで EC チャネルのみで製品の販売を行っていたディセンシアだが、2019 年9月に伊勢丹新宿本店に唯一の直営店舗をオープン。より立体的な形でブランドをプレゼンテーションする場を得た。

Text SHIHO TOKIZAWA

こちらの情報は『CYAN ISSUE 023』に掲載されたものを再編集したものです。

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