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精油の化学を味方につけて 花の香りは美しさのお守り

 植物は、自然の神様によって創られた芸術品。とくに「花」は、美しい姿と華やかな香りのものが多く、太古の昔から人間を魅了してきたスペシャルな存在だ。精油は、栽培される土地の気候や環境によって含まれる香気成分の量が少しずつ変わってくるため、化学的な研究分析を持ってしても、効果効能を言い切れない難しさがある。それでも近年では医療分野でも用いられるようになり、ストレスフルな現代社会の光明として注目度が高まり続けている。日常のさまざまな場面で心と体を癒してくれる花の精油から、今回はフローラルノートの代表的存在ともいえるローズを筆頭に、女性ならではの不調に寄り添ってくれるゼラニウム、スキンケア効果の高さでも知られるネロリ、健やかな眠りをサポートしてくれるカモミールと、4種類の花をクローズアップ。

活用度の高さで選ぶなら ローズとラベンダーは必須

 昔から現在にいたるまで、結婚式のフラワーシャワーのように祝祭ごとの装飾には必要不可欠な花。
「その中でも、ローズはとくに歴史文化における言い伝えが沢山あります。すでに古代ローマのネロ皇帝の時代には、宴会のときに二日酔い防止策としてお酒とともに強肝作用のあるローズウォーターを一緒に飲んでいたようです。精油は肌の引き締めや透明感アップといった効果が高いことでも知られていますが、冷却や鎮静作用もあるので打ち身や目の疲れなどを癒すのにも使われてきました。花の精油やハーブティーには、PMSや月経痛、更年期の諸症状など、女性トラブル全般のケアに用いられてきたものが比較的多くあります。

 アロマセラピー誕生のきっかけとなったラベンダーもまた、花(と葉)から精油が抽出されています。ラベンダーは古代ギリシャや古代ローマの頃から公衆浴場に浮かべられていたりと、昔から薬効が認められていましたが、1920年代後半に香粧品の研究者であったルネ=モーリス・ガットフォセが、実験中に手を火傷してしまった際、近くにあったラベンダーの抽出液をつけたところ痛みが和らぎ治ったことから、フランス語の “アロマ” と “テラピー” を融合した造語が生まれ、本を書き上げました。ラベンダーというと有名なのはプロヴァンス産ですが、戦後にラベンダーの精油の需要が高まったことで、現在では世界のいたるところで栽培されるようになりました。ラベンダーには真正ラベンダー(コモンラベンダーやラベンダーとも呼ばれる)、スパイクラベンダー、ラバンジンなど、さまざまな種類があります。ラベンダーは、鎮静作用のある酢酸リナリルやリナロールといった香気成分を豊富に含んでいることが大きな特徴です。ただ、ラバンジンだと鎮静作用のある酢酸リナリルなどの含有率は低めで心身を活性化させるカンファーを含んでいたり、スパイクラベンダーは1.8-シオネールという殺菌作用のある成分が強かったりと、育つ場所の環境条件の違いや種類によって含まれる香気成分や濃度がちょっとずつ変わってきます。これは、今回フォーカスするカモミールも同じです」

花の香りはスキンケアや 女性性アップにも役立つ

 そのほか、エキゾチックで濃密な花の香りを持ち、効能もぜひ覚えておきたいのはイランイランやジャスミンなど。
「イランイランは、インドネシアやアジア熱帯地方のバンレイシ科の植物です。精油を抽出しているのはイエローの花からです。幸福感を呼び起こすようなまったりとした甘い香りが特徴で、香水の原料として使われることが多いです。スキンケアに用いると、皮脂分泌のバランスを取ってくれる働きがあります。イランイランは、非常に強い生命力を持った花です。精油を抽出するにあたっても収穫量を確保しやすいようで、ジャスミンと作用が似ていることから “貧者のジャスミン” などと呼ばれたりもします。一方で、本物のジャスミンは、1キロの精油を抽出するのに1トンもの花が必要な高級精油です。熱に弱いため水蒸気蒸留法での抽出が難しく、溶剤抽出法でしか採れません。この抽出法だと花のワックスが溶け込みやすく、ジャスミンの精油は色が濃く粘度が高いという特徴があります。ジャスミンはインド原産で、やはり古くから宗教儀式などの記録に登場している花です。現在では品種の数が200〜300種もあるとされ、そのほとんどはアジア産。“夜の女王” や “森の月光” と表現されることもあるように、夜になるとふわっと濃厚に香りたちます。7月〜9月が収穫期で、ローズは朝摘みされますが、ジャスミンは夕方から夜中にかけて、太陽が出るまでに収穫を終えるそう。精油の香りは副交感神経を優位にしてリラックスさせてくれるので、抑うつや不安、緊張など、ストレスを和らげたい時におすすめです。また、月経痛などの女性特有のトラブル全般、最近では分娩時の不安のケアや産後うつ対策用として、クラリセージや今回フォーカスするネロリなどとブレンドして使われています。スキンケアでは、乾燥ケアやエイジングケアに適しているといわれています。ジャスミンやイランイランは、女性は苦手と感じる方もいらっしゃいますが、男性はいい香りと感じる方が多い傾向があるので、センシュアルな香水づくりに欠かせない花です。

Teaching from…

鎮西 美枝子先生(ニールズヤード レメディーズ)
ホリスティックスクール ニールズヤード レメディーズ講師、AEAJ 認定アロマセラピスト、AEAJ認定アロマセラピーインストラクター、JAMHA 認定ハーバルセラピスト、JAMHA 認定ハーバルプラクティショナー。JAMHA 認定日本のハーブセラピスト。アロマセラピーの歴史についての造詣の深さはもちろん、精油を用いた調香にも詳しい。

ホリスティックスクール ニールズヤード レメディーズ
アロマセラピースクールの先駆として、1996年に開設。精油やハーブを用いた自然療法を本格的に学ぶ講座や、人気の「はじめてのアロマ香水」をはじめ、実践しながら楽しく学べる各種の1Day講座など、充実した内容が魅力。現在は表参道校・大阪校があり、アロマセラピーの基礎を学べるベーシッククラスは両校にて毎月開講中。表参道校では今年9月より待望の夜クラスもスタート。アロマテラピー検定1、2級に対応しているので資格試験を目指す人にもおすすめ。

Edit SATORU SUZUKI
Text KUMIKO ISHIZUKA

こちらの情報は『CYAN ISSUE 024』に掲載されたものを再編集したものです。

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