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 爽やかで青みのある香りに、ビリビリとくる独特の刺激。山椒はミカン科サンショウ属の樹木で、日本を中心とした種とされています。その歴史は非常に古く、縄文時代には山椒が入った土器が日本で発見されているなど、山椒はゆずと共に日本の二大調味料と言われ、長く親しまれてきました。そのことは、日本最古の書物である『古事記』や古事記から8年後に編纂された『日本書紀』にもひとつの歌として登場していることからもよくわかります。「みつみつし来目の子等が 垣本に 植えし山椒 口疼く 我は忘れず 撃ちてし止まむ」…(山椒のように)口じゅうがヒリヒリするような敵の攻撃の酷さは、今も忘れない。今度こそ、必ず打ち砕いてみせよう。…というように、戦の手厳しさを山椒に喩えて詠んでいます。

 実は、熟した果皮をすりおろした「粉山椒」以外にも、熟す前の青い実を冷凍したり塩漬けにしてちりめん山椒に入っている「実山椒」にしたり、初夏に数日間だけ咲く花を佃煮や汁物に添える「花山椒」としていただいたり、春先からの若葉を天ぷらや炊き込みご飯に混ぜる香り高い「木の芽」として食べるなど、様々な取り入れられ方をしています。更には、薄皮を細かく刻み佃煮にしたものを「辛皮(カラカ)」として珍味にすることも。辛皮は実の数倍辛く、痺れる感じも強いとされています。「痺れる」と言えば、近年、日本でも様々な食べ物に使われている花椒(ホワジャオ)は、同じくミカン科サンショウ属の同族異種・華北山椒の実です。山椒よりも更に香りと痺れる辛味が強く、担々麺や麻婆豆腐の味付けには欠かせない存在です。

中国の肉・魚料理に欠かせない伝統的なミックススパイス・五香粉には、花椒が入っていることが一般的

 なぜ山椒には唐辛子や辛子と違い、独特の痺れるような辛さがあるのかと言うと、山椒の実に含まれる「サンショオール」という辛み成分に局所麻酔効果があるからです。他にもこのサンショオールには整腸作用や内臓粘膜強化効果があるとして、古くから樹皮や果皮を薬として用いてきました。他にも、発汗作用などの代謝の改善にも効果があるとされており、葉を粗く刻み、布の袋に入れて、入浴剤にすることもあったそう。

香りを楽しむ、山椒のアイテム。めぐりを良くしたり、あたたかく感じながら爽快感を味わって。(左から)国産栽培の山椒の果皮から精油を抽出。数少ない山椒の精油の中でも科学肥料や農薬など一切不使用の、トレーサビリティにもこだわりのある精油シリーズ。エッセンシャルオイル サンショウ(果皮部)5mL ¥6,100 / yuica、古くから伝わる「山椒浴」のエッセンスを手軽なバスソルトで。和漢の植物エキスを配合した入浴剤。山椒を中心に、りんごや花梨の甘い香りが広がり、体の芯からあたたかく。山椒香草湯 1包 ¥190 / AYURA

 また、樹木は非常に硬く、殺菌・解毒作用があるとされており、ゴマなどをするすりこぎには、昔から山椒の木の枝が使われていることも多い。今でも昔ながらの製法を守る木工作家は、山椒の木材をすりこぎに加工するこだわりを持つ人もいるのだとか。木は成長が遅く、太くなるまでに10年はかかると言われることから、古くから非常に珍重された薬の木でした。
 南は屋久島から、北は北海道まで広く分布している山椒の木。「山椒」の「椒」という文字には、「芳しい」という意味があり、果実から抽出した精油はアロマオイルとしても流通しています。

実だけでなく、葉や樹皮まで。山椒と、“親戚”である花椒の魅力。

 少量でも血流を良くする効果のある山椒の精油は、ミカン科らしいすっきりとした香りが先に立ち、後から独特のスパイシーな香りがやってきます。その香りは脳を活性化するとも言われているため、キャリアオイルで伸ばしてリフレッシュするためのマッサージやオイルを焚く芳香浴にはぴったり。胃の疲れやもたれを感じているとき、心がどうにも重だるく、鈍いと感じている時など、停滞を感じる時にピリッとした刺激を与えてくれる “心身の活性剤” として良いでしょう。

Photographer SUGURU KUMAKI
Edit & Text KAORU TATEISHI

こちらの情報は『CYAN ISSUE 024』に掲載されたものを再編集したものです。

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