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「清涼感」と「甘さ」という、一見相反する効果を備えたシナモン。日本では西洋菓子の香り付けというイメージが強いが、インドではカレーに使われたり、地中海を中心としたヨーロッパ世界では野菜や肉料理に使われることも。原産はインド〜ベトナム周辺であるとされ、紀元前4000年頃からギリシャに輸入され、使われていた記述があるなど、世界最古の歴史を持つスパイスの一種です。
見た目の通り「木の皮」であるシナモンには、発汗作用・健胃作用・利尿作用などをもつスパイスです。冬の保存食やホットドリンクに使われることが多いのは、風味だけでなく冬の寒さから体を助ける意味合いも強かったのでしょう。ぐるぐるとスティック状に巻かれた形が一般的ですが、元々は木の外皮そのものの形で流通していました。また抗菌・防腐作用があり、古代ヨーロッパではとても貴重なものとされ、紀元前には、シナモンを使うこと自体がステータスでした。現在のスペインの伝統的な料理やお菓子にシナモンを使った、どこかエスニックな料理が多いのは、古代ローマ時代にアフリカのムスリムであったムーア人の影響であると言われています。体のめぐりも、文化の混淆も促すスパイスが、ルックスもぐるぐるとしてホットドリンクのマドラーとしても使われているのは、どこか不思議な符合を感じさせます。
山崎由貴さんがシナモンの効果を実感したのは、イギリスに留学していた時期。「あまりに寒くてよくジンジャーを摂っていた私に『シナモンも体をとても温めてくれるよ』とクラスメイトに教わったんです。水で煮出して飲むと、シナモン自体の甘みや香りの深さ、強さに改めて気付かされました」。写真はその煮出したシナモン水。冬にうれしい、体をあたためるホットデトックスウォーターとしておすすめです。

古くから漢方薬「桂皮ケイヒ」としても重宝されてきたシナモンは、香り成分シンナムアルデヒド(桂皮アルデヒド)が美容や健康に大きく貢献すると言われています。この成分は、外側と内側の二重構造になっている毛細血管をつなぐ内皮細胞Tie2タイツーが加齢により活動を低下させてしまうことを防ぎ、Tie2の活性化を促進させてくれる唯一の成分であることがわかりました。つまり、シナモンを摂ることによって毛細血管の修復・活性化をし、老化によるシワやむくみ、たるみなどを改善させることが期待できるというわけです。
さらに、香辛料として摂るだけでなく、香りを嗅ぐだけでも効果があるのが、シナモンのすごいところ。シンナムアルデヒドは40度前後でもっとも香りを発散させます。脳に働きかけて血流を良くしたり、プロアントシアニジンという成分がインスリンの分泌を活性化し、血糖値を安定させる働きもあるため、勉強前やダイエット中にアロマテラピーとしてシナモンの精油を使うのもおすすめです。
人肌の温度でもっとも香り華やぐ甘くて深い、シナモンの物語。
Cinnamon

八ツ橋などに使われるニッキは香りが似ていますが、シナモンとは少し違う種。一般に「シナモン」と呼ばれるスパイスは、セイロンシナモンの木から採れるものであり、ニッキは日本肉桂から採れるもの。ニッキのほうが辛みが強いと言われています。また、中国のシナニッケイから採れるものは「カシア」と呼ばれ、日本では現在ではカシアが「シナモン」と呼ばれて流通することが多いようです。そのいずれにも有効成分のシンナムアルデヒドは含まれていますが、過剰摂取により副作用が出ることもあるので、シナモンの摂り過ぎには注意したほうがいいでしょう。
シナモンのめぐる力に着目したビューティーアイテム。

Photography SUGURU KUMAKI
Styling YUKI YAMAZAKI
Edit & Text KAORU TATEISHI
こちらの情報は『CYAN ISSUE 012』に掲載されたものを再編集したものです。