手間と時間をかけて抽出されるエッセンシャルオイル
抽出される部位、抽出方法によって香りに違いのでるエッセンシャルオイル。香りはどんなプロセスを経て人間の心と体に作用するのか?近代になり医療の現場で使われはじめたことも納得のメカニズムを解説。

水蒸気蒸留法
植物を蒸し上げた水蒸気から成分を抽出する
多くの植物に対応している方法で、主に植物の花や葉を釜に入れ、釜の中を水蒸気で満たし、エッセンシャルオイルとなる成分を気化させます。そしてエッセンシャルオイルが溶け込んだ水蒸気は冷却されると液体に変化、この液体が容器に溜まると自然に上層は芳香成分、下層は水分(フローラルウォーター)に分離し、上層をろ過したものがエッセンシャルオイルとなります。
油脂吸着法
牛脂やラードなど動物の脂に香りを吸着させて抽出する
熱に弱いジャスミンなどに関しては、古くから動物の脂を使う方法が行われてきました。ガラス板に牛脂やラードなどを塗り、その上に摘んだばかりの花びらを並べ脂に香りを吸着させます。このガラス板は何枚も重ねられ、香りが飽和するところまで花びらを何度も新しいものに変えていきます。香りが脂に吸着しきったら、アルコールで洗って香りの成分を分離させてエッセンシャルオイルを抽出します。歴史的な抽出方で今は行われておりません。
圧搾法
果実をぎゅっと搾ることで果皮から成分をとりだす
主に柑橘類の果皮から精油をとりだす時に使われる方法。昔は手作業で皮を擦って集めた液体から抽出していましたが、現在は機械で果実をつぶしながら、果汁とエッセンシャルオイルを分離して抽出することが可能に。非加熱で行われるのでよりフレッシュなエッセンシャルオイルを得ることができますが、一方で温度の変化に弱いため、変質しやすく管理には注意が必要です。
溶剤抽出法
揮発性の高い有機溶剤に植物を漬けこんでとりだす
油脂吸着法に代わり主流となった抽出方法。揮発性の高い有機溶剤(ヘキサンやベンゼン、エーテルなど)に植物を漬けて、植物の成分がしっかり染み出したら溶剤に熱を入れて気化させることでワックス状の物質(コンクリート)をとり出します。このコンクリートをアルコールで洗うとエッセンシャルオイルは、ほかの方法で抽出されたものと区別してアブソリュートと呼ばれています。
Edit SATORU SUZUKI
Text KUMIKO ISHIZUKA
【参照資料】
改訂新版 ニールズヤード式アロマセラピー レッスン
監修 ホリスティックスクール ニールズヤード レメディーズ
河出書房新社
こちらの情報は『CYAN ISSUE 020』に掲載されたものを再編集したものです。