next prev cart fb in line link open tw yt

植物の薬効感を捉えやすい 草や葉から抽出された香り

「中世のヨーロッパでペストやコレラなど感染病が流行した時、ハーブやスパイスを扱う業者はそうした病気にかかりにくかったため、その香りに何か意味があるのでは?と考えられるようになり、街角で香りを焚いたり、病院でハーブが焚かれるようになっていったようです。中でもローズマリーやマジョラムなどのハーブは、床に敷きつめられて毒消しの意味も込めて家を守るのに使われていたり…」
まるでおとぎ話を聞いているような気分で、そのハーバルな香りを想像してみる。そして現代に生きる私たちも、精油を手にすればそんな薬草の恩恵にあずかり、楽しみながらセルフケアをできる幸運。ホリスティックスクール ニールズヤード レメディーズにて、アロマセラピーの講座をはじめ、精油を使った自然香水のブレンド講座なども担当する鎮西美枝子先生のガイドのもと、今回は草や葉の精油が織りなすグリーンアロマティックな旅に出よう。

心と体の頼もしいサポーター シソ科やイネ科の精油たち

 総じてハーブと呼ばれる葉や草から抽出された精油には、古代からその植物が薬草として使われていたものが多い。そのなかでも、たくさんの種類が属しているのがシソ科だ。日本でおなじみのシソの葉も和食に欠かせない薬味として用いられているように、消化器系や免疫系の働きをサポートしたり、すっきりとした香りで気持ちを落ち着かせたり、体を活性化するといった特徴を持っている。
「シソ科の植物の精油で代表的なのは、ラベンダーやペパーミントなど。シソ科の植物は、花の大きさはさまざまですが、どれも形が似ています。花は合弁(つながっている状態)で左右対称、花の形は唇形、といったところが共通しています。そのほか葉が対生(茎に対して2枚の葉が向きあって生えている)であったり、茎の断面が四角いところなども共通しています。低木のものもあれば、茎と葉から成る草本のものもあります」

 そのほかにも、芳香浴やアロマトリートメントなどの際によく耳にする精油としては、クラリセージ、ローズマリー、マジョラム、パチュリ、タイム、レモンバーム(メリッサ)などもシソ科の精油。いずれも葉や草から水蒸気蒸留法で抽出される。また、イネ科の精油にも、免疫系の調整に役立ったり、気分を明るくしてくれるようなものがある。
「イネ科の精油には、レモングラスやシトロネラ、パルマローザ、ベチバーなどがあります。葉は細長くて薄く、平行に葉脈が走っているといった特徴があります。イネ科のものは地下茎が広がるものが多く、草から水蒸気蒸留するものもあれば、ベチバーなどの場合は根を大量に掘り起こして乾燥させ、根から水蒸気蒸留で精油を取り出しています」
 イネ科の植物は、人類にとって食糧となるものが多いという。虫に食べられないよう忌避効果のある化学成分を含んでいる精油が多く、ナチュラル成分で作られた虫除けスプレーにはイネ科の精油が配合されていることが多い。今回は、シソ科からはローズマリー、クラリセージ、マジョラム、イネ科からはレモングラスに焦点を当てるとともに、精油の奥深さの一つともいえる “ケモタイプ” についても触れておこう。

精油の働きを担う化学成分 “ケモタイプ” って何?

「植物にはいろいろな化学成分が含まれており、どんな成分が、どんな割合で含まれているかで作用が変化します。そうした化学成分の割合が表示されている精油を “ケモタイプ” と呼びます。ケモとはフランス語 “化学” という意味。フランスやベルギーでは医療に精油が使われることもあります。そうした場合、きちんとした結果を求めるには成分の構成を明らかにしておくことが大切です。薬の成分とはまた違うのですが、含まれる成分によって香りも作用も違ってくるためです。ケモタイプ精油は、CTと表示されていることが一般的。今回お話をする植物の中では、ローズマリーがいくつかのケモタイプを持つ精油の代表的存在です。ローズマリーの精油にはカンファーやベルベノン、シネオールといった化学成分が含まれており、どれをより多く含んでいるかでローズマリー・カンファ―、ローズマリー・ベルベノン、ローズマリー・シネオールと、3つのケモタイプが存在します」
 カンファーが多いものは血行促進など、シネオールが多いものは呼吸器系のケアなど、ベルベノンが多いものは肝臓の強壮や消化器系のサポートなど、ケモタイプによって得意とする働きは少しずつ異なるのだそう。

「数年前、ローズマリーの精油は認知機能を高める、認知症予防に役立つということで、テレビなどで取り上げられ大きな話題となりました。これは認知症予防学の第一人者である鳥取大学の浦上先生の研究で、朝はローズマリーとレモンの精油、夜はラベンダーとオレンジの精油を嗅ぐことで認知症予防になる、というアプローチでした。この研究でのローズマリーは、とくにケモタイプのローズマリー・カンファーを用いることが重要だと論文では示されています。ケモタイプ精油は、日本ではまだ一般的とはいえませんが、このようにより細部まで対応した結果が求められる医療やスポーツの世界で、セラピストがケモタイプ精油を使用するケースもあります」
 精油を日常生活に取り入れるにあたっては、こうした植物の中に存在する化学成分の精妙さに意識を向けると同時に、まずは自らの感性で香りと付き合うことが大切なことだ。

Teaching from…

鎮西 美枝子先生(ニールズヤード レメディーズ)
ホリスティックスクール ニールズヤード レメディーズ講師、AEAJ 認定アロマセラピスト、AEAJ 認定アロマセラピーインストラクター、JAMHA 認定ハーバルセラピスト、JAMHA 認定ハーバルプラクティショナー、JAMHA 認定日本のハーブセラピスト。アロマセラピーの歴史についての造詣の深さはもちろん、精油を用いた調香にも詳しい。

ホリスティックスクール ニールズヤード レメディーズ
アロマセラピースクールの先駆として、1996 年に開設。精油やハーブを用いた自然療法を本格的に学ぶ講座や、人気の「はじめてのアロマ香水」をはじめ、実践しながら楽しく学べる各種の1Day 講座など、充実した内容が魅力。現在は表参道校・大阪校があり、アロマセラピーの基礎を学べるベーシッククラスは両校にて毎月開講中。

Edit SATORU SUZUKI
Text KUMIKO ISHIZUKA

こちらの情報は『CYAN ISSUE 022』に掲載されたものを再編集したものです。

SERIES