next prev cart fb in line link open tw yt

CHICO SHIGETA

 SHIGETA は「驚きのある、オーガニック(ORGANIC WITH IMPACT)」を叶えるため、ホリスティックビューティのエキスパートである CHICO SHIGETA がフランス・パリで立ち上げたブランドだ。オーガニックコスメだけにとどまらず、深い呼吸やセルフマッサージ、身体をリセットする食生活などホリスティックなアプローチを提案しながら、植物の持つチカラを体感してもらうことをコンセプトとして掲げている。

 CHICO の両親は美容室とエステサロンを経営していた。そのため、彼女は幼い頃から技術の手ほどきを受け、サロンを手伝う日々を送っていた。美と癒しが身近にある環境で感性を磨きながら、両親や祖母から “自立的” な生き方を学び、育ったという。大学に進学すると、メイクアップ&ネイルのスクール、美容学校というトリプルスクールを並行してこなし、意欲的に美容の知識を深めていった。

 当時からフランス人女性と接する機会が多かったという CHICO は、彼女たちが体現する美の在り方に感銘を受け、1998 年、25 歳の時に渡仏することを決意する。フランスに渡ると、語学の取得に専念しながら、エステティック、化粧品学、ボディーケアなどを学び、エステの分野においてフランスの国家資格も取得した。渡仏したきっかけについて、彼女はこう語っている。

「身近にいたフランス人女性たちの所作や仕草から醸し出される “佇まい” がとても素敵だったんです。どことなく脱力しているのにかっこいい、そんな魅力に惹かれました。日本人女性との違いを聞かれることも多いですが、それは、コンセプトを持っている点かなと思います。彼女たちは、自分とは何者か、ということをよく理解している。自分の歴史・経験値に対しての自信があるんでしょう。私は小さな頃から、“自立した女性が美しい” という教育を受けて育ったので、そういった背景と、フランス人女性の持つ美しさがリンクしたのだと思います(CHICO)」

ネリー・グロジャンとの出会い

 2003 年になると、CHICO はフランス自然療法学のパイオニアである自然療法博士ネリー・グロジャンのもとでパーソナルアシスタントとして住み込みで学び始める。そこでの生活において、自然療法は日常の中に当たり前に根付いているものだった。

 彼女の人生に大きな影響を与えた呼吸法(現在 SHIGETA で提唱している呼吸法のベースとなるもの)を学んだのも、このときだった。ネリー博士は日頃から、呼吸の大切さを CHICO に伝えていた。実際にその呼吸法を取り入れ衝撃を受けた彼女は、ボディトリートメントの施術にも積極的に取り入れるようになった。呼吸法との出会いが、彼女のセラピーを今までのそれとは全く異なるものに進化させた。

「私のセラピストとしてのキャリアは、この呼吸法がなかったら成立していなかったと思います。呼吸法を取り入れるようになってからは、全く疲れなくなりました。重さが残らないんです。具体的には、“この人のここを治そう” とか、そのような考えは一切なくなりました」

創業当時のマッサージオイル

CHICO のセッションでは、呼吸によって気のエクスチェンジが行われるが、それは相手とのシンパシーが目的ではない。その人が本来持っている機能を高め、身体を自立させることが目的だ。あくまでも、本人が自分のチカラで独り立ちをするためのサポートとしての役割。その人の持っているポテンシャルを、いかに引き出せるかということ、その最初の一歩を踏み出すきっかけを施術を通じて与えることが、彼女のミッションになった。そしてその哲学は、現在の SHIGETA にもしっかりと根付いている。

ネリー・グロジャン:自然療法士・芳香療法士。
プロヴァンスに創設された「芳香博物館」を運営するなど、自然療法の普及・ 啓蒙活動のために世界各国で講演・執筆活動を続けている。

AWAKING シリーズで使用されているローズは、世界有数のローズの産地ブルガリアのもの。様々な産地の香りを試した際、ブルガリア産のものにピンときたCHICOはすぐ現地へ飛び、出向いた中でベストな農園のものを採用。

SHIGETA 創立

 その後、CHICO は様々な経験を活かし、オリジナルのホリスティックビューティメソッド(バイタリティー・コーチング)を構築。世に広めるにあたり 2004 年に SHIGETA を立ち上げ、パリでセラピストとしての活動を本格的にスタートした。

 創立当時はまだオリジナル製品はなかったが、VOGUE や ELLE、FIGARO といった名だたる雑誌社に自らリリースを送り、PR をした。その結果、編集者から声がかかるようになり、CHICO のセッションの評判は瞬く間に広がっていった。顧客には美意識の高い数多くのセレブリティも名を連ねた。

しばらくすると、CHICO は顧客の悩みや状態に合わせ、オイルをブレンドし手渡しするようになる。これが、のちに SHIGETA のシグネチャープロダクトとなったブレンドエッセンシャルオイルシリーズの始まりだ。高品質の植物の力を凝縮させたブレンドはダイレクトな実感を与え、“なんとなく効く気がする” というそれまでのアロマのイメージを覆していった。そしてフィガロジャポンが本国の記事を紹介したことがきっかとけとなり、2007 年に日本初上陸。伊勢丹新宿店に SHIGETA のカウンターをオープンした。

バイタリティーコーチング:美しく健康的な毎日のためにSHIGETAが提案しているシンプル&簡単なセルフケアメソッド。自然の法則に沿った4つの柱を組み合わせることにより、体が本来備えている心地よさを目覚めさせる。4つの柱とは①意識した呼吸、②毎日の食事、③セルフマッサージ、④植物の癒しの力。

創業当時のエッセンシャルオイル

ラボラトリーの設立

 2010 年になると、「オーガニックイノベーションを研究できるチャレンジングな環境を作るためには自社ラボを作るしかない」と考え、自社製造工場をパリ市内に設立。効果の出るフォーミュラを納得がいくまで研究し、製造過程を最後まで管理。フランス政府とパリ市が SHIGETA のオーガニックイノベーションプロジェクトに賛同し、サポートを受けプロジェクトがスタートされた。

すべてのプロダクトにおいて、使用する素材の選定からフォーミュラ開発、パッケージングに至るまでを自社ラボラトリーで管理。感覚がフレッシュな若いスタッフが多く、日々新しい進化を遂げている。

製品へのこだわり

 SHIGETA では製品の開発からネーミングまで、全てにおいて CHICO 自らが携わっている。原料調達は、愛情と情熱をかけて取り組む生産者を探すところから始まり、選び抜かれた上質でナチュラルな素材を使用。時には自ら農園などの現地へ足を運ぶ。

 製品開発のもととなる種は、彼女の頭の中にある漠然とした世界観だ。そこに少しずつ輪郭が与えられ、色付けがされ、具体的な形となり名前がつけられていく。ぼんやりとしたイメージを形にしていくまでのプロセスは様々。写真や絵、コラージュなども活用されるが、CHICO にとって最も要となるのは音楽だ。イメージに合いそうな曲をサーフして探し、プレイリストを作ったら、しばらくの間、それしか聴かない。漠然とした世界観を具現化するというのは、例えるなら無数のラジオの波長からチューンを探るようなもの。そのツールとして、彼女には音楽がしっくりくるという。

「こんな香りかな、色合いはこうかなって、だんだんと明確にしていきます。何度も咀嚼しては消化する作業なので、そのうちにどんな名前をつけたらフィットするのか、ということまでクリアになっていきます。ネーミングは、ズバッって出てくることもあります。ワイルドグレース(シャンプー&トリートメントの製品名)に関しては、夫のスクーターの後ろに乗っている時に突如ひらめいて、その瞬間に “ワイルドグレース!” って叫びました(笑)」

バスソルトはヨルダンの死海の塩を採用。CHICO 自身がヨルダンに実際に出向き、美しいクリスタルと純度の高さに感銘を受けたという。

SHIGETA のロゴは2回変わっている。初めのロゴは、ウェルビーングを伝えるにあたり、柔らかく、そしてやさしく広がるように、輪が取り入れられていた。その後、輪の思いを G に込め、女性らしくするためにラインを細くした。更にブランド誕生から 10 年が経った際、“これからどこへ行きたいか” という根本を改めて見直し、現在のロゴへと変更された。

「私が製品を作り始めた 2016 年というのは、みんながオーガニックにがっかりしていた時代だったと思うんです。使い心地が悪く、オーガニックであること以外に特徴のない商品が多かった。でも SHIGETA にとってはオーガニックであることは当たり前でした。10 周年を迎えたこれからは最先端のグリーンテクノロジーを駆使し、植物の力を最大限に引き出した、さらに効果のある、使いやすいものを作ることが使命であると考えました」

当時他のブランドはパッケージに色を使い、エモーショナルに訴求している製品も多かったが、SHIGETA は敢えて余計なものはそぎ落とした。それは、“きちんと効果が出るものだと思ったら、それがたまたまオーガニックだった” という逆転の発見をしてもらいたいという意思の表れでもある。

SHIGETA 11 Essential Oils

もともとはラヴェンダーファイン以外の 10 種類だったエッセンシャルオイルのラインナップ。“誰に、何のために、使ってもらう製品なのか” ということを念頭に置きながら開発・ネーミングされた。(製品名の下にあるコメントは、名に込められた想いや背景)

GOLDEN DROPS
1滴1滴がまるでゴールドのように貴重なもの。たった1滴でも美肌に。

BODY MIND SPIRIT
心・身体・精神のバランスがその人の “1番” 引き出す、という考え方から。

MIDNIGHT LUSTER
美しいツヤ(ラスター)のある髪は寝ている間に育まれる。そんな夜のヘアケアに。

FREE ME
痛みやこわばりからの、解放。

RIVER OF LIFE
血液のことを英語で比喩的に“生命の川”と呼ぶ。

DEEP BREATH
「深呼吸して」の英語表現 “Take a deep breath” が由来。呼吸が深くなるように。

BON APPETIT
毎食をおいしくいただく楽しみのために。

SWEET DREAMS
家族に「おやすみ」と一緒にかける言葉。いい夢を見てほしいという思いから。

LAVENDER FINE
ラヴェンダーファインと呼ばれる、よりグレードの高いラヴェンダーを使用。

MORNING SPARK
朝目覚めた瞬間から閃光を放つかのごとく力を発揮してほしい。

INNOCENT PURITY
毒素のない浄化した身体とは、“無垢(イノセント)な身体” なのではないかという発想から。

ブランドのこれから

 SHIGETA は上陸当時から日本のオーガニック畑を耕し、ホリスティックなライフスタイルというものを提案し続けてきた。そして今や、その思想は多くの人たちに受け入れられるようになった。時代がようやく追いついたとも言える。ひとつのミッションを終えた今、SHIGETA はページをめくり、次の章へ向かおうとしている。現代女性は、自分のライフスタイルに投資をし、身体が心地いいと感じることを実践しているが、それは言い換えれば、“私は美しい(I am beautiful)” の概念自体が変わったと言うことだ。美のコンセプトのシフトチェンジが起き、今までは “憧れのこの人になりたい” とうものだったのが、“心地いい=美しい(I feel beauty = I am beautiful)”」に変わったのだ。そして、この概念の変化によってオーガニック市場が広がり、付加価値としてグリーンテクノロジーを使ったオーガニック成分も増えてきた。SHIGETA では今後も、そういった最新テクノロジーを取り入れながら、植物のチカラを体感できるオーガニック製品を増やしていくという。

CHICO SHIGETA

Message from Chico

美意識の新しい価値基準が生まれた現代を生きるこれからの女性に、今 CHICO が伝えたいこととはどんなことだろうか。

「インテリジェントであることはすごく大切だと思うけど、でも1番大切なのは感性だと思う。私は、“心地いい” の連続が、ハピネスだと思うんです。それは日々使うコスメだけじゃなくて、言葉でも食事でも、何でもそう。そしてその判断基準として、自分の直感を1番信用してあげるべきだと思います。直感を信じてあげると、全ての選択肢が簡単になります。何も迷わない。その連続が1番健康的だし、最も身体が喜ぶことではないでしょうか。直感って言葉だけ聞くとふんわりしているけど、自分の過去の経験をもとに自分自身で瞬間的にジャッジすることなんですよ。なので、心地いい方を直感でジャッジすることを繰り返せば、きっと今まで以上に自信が持てるし、自己肯定感も深まっていくと思います」

Text SHIHO TOKIZAWA

こちらの情報は『CYAN ISSUE 022』に掲載されたものを再編集したものです。

SERIES