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Rose

自信の回復や魅力アップ 内ら女性らしい輝きを

学名:Rosa damascena
科名:バラ科
和名:ダマスクバラ
主な産地:フランス、モロッコ、ブルガリア、トルコなど

「紀元前3000年頃のメソポタミア文明の粘土板には、すでにローズに関する詩が残されており、エジプト文明のツタンカーメンのお墓からも花びらが見つかっています。ひとくちにローズといっても、赤いものと白いものではその意味づけがやや異なります。赤いものは、古代ギリシャにおいて愛と美の女神である “アフロデーテの血の色” と表され、白いものは純潔の象徴として現在もキリスト教において聖母マリアを象徴する花です。ローズは古くから香水の原料として用いられ、当初は油脂吸着法という動物の脂に香りを溶け込ませる方法で抽出されていました。後に水蒸気蒸留法によって抽出されるようになったのですが、1キロの精油を水蒸気蒸留法で得るには3トンもの花びらを必要とします。この水蒸気蒸留法で得た精油はローズ・オットーと呼ばれ、使用されるのはダマスクローズと呼ばれるブルガリア産のローズのみ。その希少性から、大変高価な精油です。ダマスクローズは、ブルガリアンローズとも呼ばれ、ブルガリアのバチカン山脈の南側にある「バラの谷」が主な産地。また、ローズの精油は溶剤抽出法でも抽出することが可能で、こちらはローズ・オットーと区別してローズ・アブソリュートと呼ばれます。ローズ・オットーほどではありませんが、ローズ・アブソリュートも精油の中では高価な部類です」

ブルガリアのカザンラクでは、現在も5月〜6月にバラ祭りが行われている。「ブルガリアは、国策としてブルガリアローズを輸出しています。ローズ・オットーの精油は、低音になるとワックス成分が固まるのが特徴。非常に高級なローズ・オットーが、比較的手に入りやすいローズ・アブソリュートかの区別は、冷蔵庫に入れた時に固まってしまうかどうかでもわかります。また、AEAJ(日本アロマ環境協会)の研究論文では、ローズ・オットーの精油は肌のキメを整えたり弾力を高めるなど、スキンケア高価が高いと発表されています」

「ローズ・アブソリュートには、ダマスクローズが使われることもあれば、センティフォリアローズが使われることもあります。ローズ・オットーは、ローズの香りの中にグリーンがきゅっと凝縮しているような印象がありますが、ローズ・アブソリュートは、フェニルチエルアルコールという香気成分が豊富に含まれていることから、いわゆるローズのイメージ通りの甘い香りを放ちます。いずれにしてもローズの香りはリラックスさせる働きと、逆に高揚させるような働き、どちらにも働いてくれます。ローズ・オットーの精油はほんの一滴でも非常に香りが立ち、悲嘆を癒して元気を取り戻したい時などにおすすめです。アロマセラピーの世界では、10世紀末頃にアヴィケンナという人が初めて水蒸気蒸留の際に得られるローズウォーターを医療に用いたという話が非常に有名で、ローズウォーターにも殺菌や冷却の作用を持つフェニルエチルアルコールやゲラニオールといった、多くの香気成分が微量の精油とともに溶け込んでいます」

Neroli

心に安定と明るさを宿して スキンケア分野でも大活躍

学名:Citrus aurantium
科名:ミカン科
和名:橙
主な産地:イタリア、フランス、スペイン、 ポルトガル、チュニジア、モロッコなど

「ネロリは、ビターオレンジの花から採れる精油の名称です。同じ “Citrus aurantium” という学名でも、果実の精油はビターオレンジ、葉や枝から採れるやや苦味のある香りの精油はプチグレインという名称で呼ばれます。17世紀イタリアのネロリ公国は、皮なめしの技術が盛んで、公妃マリー・アンヌがなめした皮の手袋をつける際に匂い消しとしてビターオレンジの花の香りを使ったことがネロリという名前の由来だそう。1リットルの精油を採るには1トン程度の花が必要とされ、花を摘む手間なども含めて非常に高価です。ラベンダーに含まれる酢酸リナリルやリナロールといった香気成分を含んでいるので興奮を鎮めたり、不安を和らげて落ち着かせる働きがあります。ローズと同じで、水に溶けやすい香気成分が多く含まれているため、水蒸気蒸留法の際に得られるネロリウォーターは古くから化粧水として利用されています。現代になってからは細胞の成長を促す作用があることがわかり、ネロリの精油はエイジングケアの化粧品にも活用されています。また、肌をやわらかくする作用もあるためニールズヤード レメディーズでは妊婦さんのストレッチマーク対策オイルに配合しています」

Geranium

ホルモンバランスの乱れや 肌の潤いバランスの調整役に

学名:Pelargoniumu graveolens
科名:フウロソウ科
和名:テンジクアオイ
主な産地:フランス、レユニオン島、中国、エジプトなど

 ローズゼラニウム、ニオイテンジクといった呼ばれ方や、学名の “graveolens” は香りが良い、という意味があり清々しく美しい芳香を持つ。「南アフリカ原産ですが、プラントハンターによってヨーロッパに紹介されました。ヨーロッパでは、17世紀初頭にグラースで栽培が始まり、その香りによって虫を避ける、あるいは悪霊から家を守る、といった目的から窓辺に飾られる花の定番になったようです。香りとしてはグリーン・フローラルに分類されますが、精油の抽出は主に葉の部分から。この葉の部分に、ローズと共通するゲラニオールという香気成分が含まれており、葉をこするとローズのような香りがするのでローズゼラニウムと呼ばれています。19世紀からはマダガスカルの隣、フランス領のレユニオン島で栽培されるようになり、その頃から水蒸気蒸留法によって精油も抽出されるようになったといわれています。ゼラニウムの精油はバランシングに長けており、気力を回復して心のバランスを取る、スキンケアに使えば皮脂分泌を調整してくれます。利尿作用も高いので、PMS時の鬱々とした気分やむくみのケアにはゼラニウムをブレンドしたオイルでのトリートメントがおすすめです」

Camomile

神秘的な青い色の精油は 現代の医薬品の誕生に貢献

“ 母の薬草 ” と呼ばれてきたカモミールは、ハーブティーとして飲めば消化器系の不調を和らげるのに役立ち、精油を用いたトリートメントは疲労回復や肌トラブルの緩和に役立つなど、人間にとっては万能的な働きを持つ。「但し、キク科の植物でアレルギーが出たことのある方は注意が必要です。また、カモミールには “植物のお医者さん” といった呼び名もあり、自然界にとっても有用な存在。無農薬でさまざまな植物を栽培する際には、カモミールを一緒に植えるとほかの植物を元気づけて健やかな環境を保ってくれます」

学名:Anthemis nobilis *カモミールローマンの学名
科名:キク科
和名:カミツレ
主な産地:南東ヨーロッパなど

「カモミールにはいくつかの種類があり、アロマセラピーの世界で有名なのはカモミールローマンとカモミールジャーマンの2種類。ほかにはモロッコのカモミールや、染料として使われるダイヤーズカモミールなどがあります。カモミールは、古代エジプト時代から太陽神ラーへの捧げものとして用いられ、人間との関わりが長い植物。“リンゴのような甘さ” という香りの表現は共通としていますが、ローマンとジャーマンでは内容的にかなり違った植物といえます。カモミールローマンは多年草で、学名に “nobilis” とあるように、高貴な感じの芳醇な甘さが特徴です。フルーティな香り立ちや、優れた緩和作用に関係しているのは、エステル類のアンジェリカ酸という成分。子供にも使える安眠のハーブといわれ、ストレスや女性の月経トラブルのケアにも向いています」

「カモミールジャーマンは一年草で、精油もありますがハーブティーとしてよく親しまれています。抽出すると青い色が出ることから、カモミールブルーという別名も。青さの素となっているのは、豊富に含まれているアズレンという成分。抗炎症や鎮痛などの作用に優れたこのアズレンをヒントに、後に西洋医学では胃腸薬やうがい薬が作られました。精油を用いたトリートメントは関節炎や肌トラブル全般のケアにおすすめですが、カモミールジャーマンの精油は排出量が少ないため価格帯としてはやや高級な部類。日本では、和名の “カミツレ” の名前でエキスが化粧品に配合されていることが多いと思います。スキンケアにおいては、抗炎症や美白作用のほか、最近でAEAJ(日本アロマ環境協会)の研究からコラーゲンの生成促進作用もあるのではないかと注目されています」

Teaching from…

鎮西 美枝子先生(ニールズヤード レメディーズ)
ホリスティックスクール ニールズヤード レメディーズ講師、AEAJ 認定アロマセラピスト、AEAJ認定アロマセラピーインストラクター、JAMHA 認定ハーバルセラピスト、JAMHA 認定ハーバルプラクティショナー。JAMHA 認定日本のハーブセラピスト。アロマセラピーの歴史についての造詣の深さはもちろん、精油を用いた調香にも詳しい。

ホリスティックスクール ニールズヤード レメディーズ
アロマセラピースクールの先駆として、1996年に開設。精油やハーブを用いた自然療法を本格的に学ぶ講座や、人気の「はじめてのアロマ香水」をはじめ、実践しながら楽しく学べる各種の1Day講座など、充実した内容が魅力。現在は表参道校・大阪校があり、アロマセラピーの基礎を学べるベーシッククラスは両校にて毎月開講中。表参道校では今年9月より待望の夜クラスもスタート。アロマテラピー検定1、2級に対応しているので資格試験を目指す人にもおすすめ。

Edit SATORU SUZUKI
Text KUMIKO ISHIZUKA

こちらの情報は『CYAN ISSUE 024』に掲載されたものを再編集したものです。

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