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今年こそ、美しい肌で夏を楽しみたいから。紫外線研究100年の歴史を持ち、日本のUVケアを牽引してきた資生堂の研究員 中西紘美さんに、心地よさと健やかさ、未来のキレイを守るためのノウハウをお聞きしました。

01. 紫外線を浴びることのメリットとデメリット。

メリットとしては、紫外線を浴びると骨の形成に必要なカルシウムの吸収を助けるビタミンDの産生が促されます。しかしながら、肌の美しさという観点からするとデメリットのほうが大きく、過度な紫外線は浴びないほうが良いとされています。紫外線を繰り返し浴びることによる光老化はシミやシワを招きます。一般的に、年齢とともに肌に現われる老化の兆候の約8割は光老化によるものとされています。「ビタミンD産生のためには紫外線を浴びたほうが良い」とも言われているのですが、夏ならば肌の一部にごく短時間だけ日差しが当たればビタミンDの産生は可能といわれています。また、食べ物からも摂取することができるのでバランスの良い食事も心がけて。

02. 日焼け止めは絶対に必要?服や帽子だけでは難しい理由。

紫外線を浴びた時、皮ふでは防御反応としてメラニンが生成されます。そのため、紫外線を長時間浴びたり、繰り返し浴びていくと、メラニンが過剰に生成されるようになりシミの発生にも繋がります。さらに紫外線ダメージは肌の奥である真皮層にも届き、肌の弾力が損なわれる原因となります。紫外線は曇った日や窓越しでも降り注いでいますし、春から夏にかけてはよりいっそう紫外線量が増えます。また、日差しは上空からだけでなく、反射することでさまざまな角度から肌に当たっています。そうなると、衣服だけでカバーできない部分、顔や首や腕といった、肌が露出している部分をダイレクトに守るには日焼け止めが最も有効なアイテムといえます。

03. 紫外線にはA波・B波・C波、実は3種類あるんです。

紫外線は、波長の長さによってA波、B波、C波に分類されます。最も波長の短いC波と、B波の大半は、地球に到達する前にオゾン層に遮断されます。なので、地球上で実際に肌に影響するのはB波の一部とA波です。B波はエネルギーが強く、肌が赤くなるような日焼け、過剰なメラニン生成のスイッチとなる炎症を起こします。波長の長いA波は、表面的な炎症ではなく肌の奥へ浸透することで知らずのうちに真皮層にダメージを与えます。

04. 最近耳にする近赤外線とは。肌にどんな影響があるの?

近赤外線は可視光線と赤外線の間に位置する光線で、肌に良い作用があるという報告もあれば、悪い作用があるという報告もあります。肌に良いという説は、だいぶ前から医療の現場などで治療に用いられてきたことから。肌に悪いという説は、透過性が高いので肌深くに浸透してダメージを与えるのではないか、という捉え方です。ただ、紫外線ほどエネルギーが強くないこともあり、世界的に統一された見解にまだ至れていないのが現状です。

05. 日焼け止め効果を表す数値、SPF値とPA値について。

SPF値は、紫外線B波を防ぐ効果を表した指数です。 PA値は、紫外線A波を防ぐ効果を表した目安です。SPF値を気にする方は多いのですが、肌の老化を進行させたくない場合、SPF値とPA値の両方をしっかり意識したほうが良いです。日本や韓国などアジアの商品はPA値で表記されていますが、ヨーロッパなどではUVAマークなどで表されています。

SPF
紫外線B波を防ぐ効果を表す
数値は1から50+まで
数値が大きいほど防御効果が高い

PA
紫外線A波を防ぐ効果を表す
+から++++までの4段階
+の数が多いほど防御効果が高い

06. 紫外線散乱剤と紫外線吸収剤。それぞれの良さを把握しよう。

紫外線散乱剤は、酸化亜鉛や酸化チタンといわれる粉末状の原料のこと。その名のとおり紫外線を肌表面で乱反射します。いわゆるノンケミカルの日焼け止めは、この紫外線散乱剤のみで日焼け止め効果を実現したものとされています。粉末であるがゆえの白浮きや、きしみ感が出やすいという特徴があります。紫外線吸収剤は固形と液状のものがあります。紫外線のエネルギーを吸収して無害な光に変換して放出します。比較的油性のものが多いため、なめらかな使用感が実現する一方で、ややベタつき感が出やすいという特徴があります。化粧品開発においては、紫外線散乱剤と紫外線吸収剤を上手く組み合わせることで、きしみやベタつきのない、より心地良い使用感の日焼け止めを作ることが可能になります。

07. 日焼け止めは塗り直すべき?YES!指標はあくまでも目安。

日焼け止めの中には、水や汗に触れても落ちにくいウォータープルーフ仕様のものもありますが、生活していると動きによる “擦れ” が加わります。軽く触れる程度なら落ちないこともありますが、繰り返される摩擦、汗をかいた時にタオルで拭いたりすると日焼け止めが落ち、そこに紫外線が当たってしまうことになります。SPF値やPA値の高さというのは、きちんとした量の日焼け止めがムラなく付着していることが前提のあくまで目安です。長時間の外出などでは、2~3時間に1回くらい、小まめに塗り直しすることをおすすめします。

08. いろいろな形状の日焼け止め、使い分ければよりパーフェクト。

SPF値とPA値が同じでも、確かに形状の違いで日焼け止め効果の特徴が少し異なってきます。ウォータープルーフの効果がよりしっかり発揮されやすいのはミルクで、紫外線がとても強い海やレジャーへのお出かけには一番おすすめです。ジェルでも水に強いものもありますが、みずみずしい感触が際立っています。スプレーは広い範囲への塗布やスピーディに塗り直したい時に。パウダーは、液状のものと比べると塗布量が少なくなりがちなのでメイク直しの時に上から重ねるなど、ミルクやジェルとの併用がおすすめです。

09. 紫外線は目からも入ってくる。肌ダメージと関連はあるの?

目から紫外線が入ってくることで、メラニンが過剰に作られて黒くなったり、炎症が起こったり、といったような人間の肌への直接的な影響についてはまだ明らかになっていません。ただ、スキー場や海水浴場で一日中過ごすと、目が赤くなったりゴロゴロとした違和感を感じるといった炎症が起こることはあり、紫外線が目そのものにダメージを与えることはわかっています。日差しがまぶしく感じるような時期、時間帯に出かける時には、日焼け止めはもちろんですがサングラスや帽子なども活用することをおすすめします。

10. うっかり日焼け要注意パーツ。忘れがちなのは唇や首の後ろ。

日焼け止めを塗り忘れやすい部分=うっかり日焼けをしやすい、といえます。例えば、髪を結んでいる時や、襟元が広く開いた服を着た時の首の後ろ。そのほか、眉間、まぶた、フェイスライン、手の甲なども要注意。また、皮膚が薄くターンオーバーが早い唇は、ほかの部分と比べるともともとバリア機能が弱い部分です。メラニン量は少ないので、紫外線ダメージによって乾燥やヒビ割れといった荒れが起こりやすいパーツといえます。海に行く時などは、リップケアもSPF値が表示されているものを選ぶと良いでしょう。

L:塗り直しが簡単で、肌にぴたっと密着。水分に触れると防御膜が強化され、色移りの心配もない透明タイプ。R:紫外線からしっかり唇を保護してツヤやかに。全4色展開でブルーのほか血色系のカラーも。(SHISEIDO)

お話を伺ったのは…

中西紘美 さん(資生堂グローバルイノベーションセンター 研究員)
資生堂の都市型オープンラボにて化粧品の商品開発に従事。19年連続売上No.1*の日焼け止めブランド(*インテージSRI日焼け止め市場データ期間:2000年11月~2019年10月)として知られるアネッサの新製品を担当。

Photography YUYA SHIMAHARA
Hair & Make up TOMOKO OKADA(TRON)
Styling NATSUKI TAKANO
Model LUKA(étrenne)
Edit SATORU SUZUKI 
Edit & Text KUMIKO ISHIZUKA

こちらの情報は『CYAN ISSUE 025』に掲載されたものを再編集したものです。

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