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植物で慢性的な不調が治っていく

 ストレス社会と言われる現代において、誰しも日々小さな不調を抱えながら生きている。冷え性、アレルギー、頭痛…。病院に行くほどではない不調が、ラベンダーやカモミールなど植物の力で和らいでいくとしたらどうだろう。

 鈴木七重さんは植物療法士として「チムグスイ」を主宰している。もともと広告デザイナーだった鈴木さんだが、次第にデザイン業界でキャリアを重ねることに疑問を抱き、たどり着いた先がハーブや精油を日常に取り入れて体と心を整える「植物療法」だった。

「会社で忙しく働いていた頃は肌荒れや花粉症といった症状が慢性的に出ていて絶不調でした。当時は徹夜やコンビニ食も多かったし、体を整える術を知らなかったんです。結婚を機にフリーランスとして働くようになり、時間に余裕ができて。今までは当たり前のようにスーパーやドラッグストアで生活用品や薬を選んでいたけど、もっと体に負担のない選択肢があるのではと思いました。探しはじめるとハーブや精油を暮らしに取り入れる植物療法に出会い、肌荒れには精油をブレンドした化粧水を、風邪にはハーブティーを、とあれこれ試しているうちにすっかり体調が良くなっていったんです」

心地よくて、ちゃんと美味しい

「心地よくないと続かないから」と話すようにハーブティーも精油も風味や香りに癖がなく普段使いしやすい。ラボで試飲も可能。

よくよく見つめ直してみると「不調は経済や効率を重視するライフスタイルの延長線上で起きていた」と話す鈴木さん。当時はバブル崩壊直後。テレビや雑誌のコマーシャルから無自覚のうちに影響を受けてしまう社会にも違和感を覚えた。「今はそうは思っていませんが、その時は広告デザイン=消費を促すものという印象が強くなってしまって。その一端を担うのではなく、健やかで美しい世界を生み出す仕事にシフトチェンジしたいと考えました」

 そうして目の前にあったのが10年もの間、実践していた植物療法だった。「効果を実感していたので『こんなに素晴らしい知恵をみんなが知らないのはもったいない。もっと多くの人に届けたい』と思ったんです。もしかするとおせっかい気質なのかもしれません(笑)また、私の祖母くらいの世代までは身の回りの植物で自分の体を整えることが当たり前で、代々その方法が受け継がれていました。ここ数十年のライフスタイルの変化で途絶えてしまった知恵をもう一度現代の暮らしに取り戻したいという気持ちも強くて」

 38歳で植物療法士の資格を取得し、自宅でワークショップを開いたのがはじまり。屋号はともに過ごす時や生み出すものが「チムグスイ(沖縄の言葉で魂のくすり)」になってほしいという願いを込めて名付けた。「ようやくやりたいことができた感覚が強くて、すごくうれしかったです。当時金銭的な手応えは全然でしたけど、伝えたいことを伝えられている実感や生徒さんが満足している様子が伝わってきました」

植物の力を暮らしに

保湿バームやロールオンアロマなどオリジナルプロダクトも充実している。丸と曲線の印象的な版画は小板橋雅之さんによるもの。

体の内側にある自然に目を向けて

 チムグスイの立ち上げから11年。浜松にラボを構え、今までの生徒数は3,000名にものぼる。講座ではハーブや精油の効能、ブレンド例に加え、自律神経の仕組みや呼吸法などホリスティックに自身を整えるための学びを深めていく。そこには知識だけではなく、植物を通じて根っこから体と心を整えましょうという鈴木さんの信念がある。

「講座で一番大事にしていることは、皆さんが体の声を聴けるようになること。たとえばハーブティーを飲んでどんな感覚がしたか? 精油を嗅いでどんな気持ちになったか? その都度感じてもらいます。今ってどうしても世間や他人など外に答えを求めがちですが内側に目を向けてほしい。私たちの体はいつだって良くなろうとしているので、内側を見つめることで不調の原因やその人にとっての最適な解が見つかるんです」

世界観を体感できる

ラボは静けさのある空間。美意識はチムグスイを構成する柱の一つ。「美しい方が心地よいから、そう在ることを心がけています」

 そうして体に目を向けるうちに自然と心の声も聴けるようになるのだという。きっと体を見つめ直すプロセスは“私がどうありたいか”心に問いかけることとイコールなのだ。「体の変化を観察するさなかで自分への理解も深まります。すると自分を好きになれたり、主体的に生きられるようになる。その循環こそが植物療法を学ぶギフトだと考えています」

 昨年末には初の著書を上梓し、発売後たった1週間で重版が決まった。今春はリトリートの開催も予定している。チムグスイの世界観はこれからも垣根を越えてまあるく広がっていく。「皆さんの心身が健やかで調和の取れた状態に向かっていくために私ができることを続けたいです。健やかというのは必ずしも完璧な健康体である必要はなく、ありのままの自分を受け入れられていれば何かしらの症状があっても良い。人がバランスの良い状態になっていく…そのお手伝いを植物とともにできれば」

メソッドが一冊に

植物療法を軸にして「ゆるめる・温める・巡らせる」というセルフケアのポイントが余すことなく柔らかな筆致で綴られている。

Photography & Edit & Text   NAO TADACHI

こちらの情報は『CYAN ISSUE 029』に掲載されたものを再編集したものです。

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