満足せずに、苦悩しつづける 貪欲な俳優・赤楚衛二が語る言葉
10月より放送がスタートしている木曜劇場『SUPER RICH』の撮影が始まったばかりの9月初旬。撮影を終えた赤楚衛二さんが穏やかな口ぶりで私たちの質問に答えてくれた。
今日は撮影ありがとうございました!いかがでしたか?
「楽しかったです!(まだ暑さの残る9月でしたが)涼しさに救われたところもあり、澄んだ空気の中で冬をイメージすることができました。背景も、都会の喧騒の中と、何もない真っ白の部屋という2つの場面で、いろんなものが出せたんじゃないかなと思います」
雰囲気の違う2ルック、赤楚さん個人的にはどちらが好きでしたか
「普段の服装に近いのは、ネイビーのシャツのルックです。着てみたいのはトレンチコートのルック。私服で選ぶのは、黒かつゆったりしたシルエットのものが多いですね。現場ですぐ着替えることが多いし、今は遊ぶ機会もあまりないので、そういうものが多くなってしまいます。ちなみに最近はリジッドデニムを買いました。昔からデニムは好きだったんですけど、上京してからはスラックス派になっていて。最近またちょっとデニムが気になりはじめ、育て中です」
デニムいいですね!この冬、他に気になっているファッションアイテムはありますか?
「革ジャンを狙っています、ルイスレザーズのずっと長く使えるのが欲しくて……」
育てていける1着ですね。
「はい。育てたいんですかね(笑)去年も革靴を買って、今やっとフィットしてきたのでめちゃくちゃ嬉しいんですよ」
ファッションに関しては“育て欲”が強いんですね(笑)今回はヘアスタイルも違った印象の2スタイルでしたが、普段こだわりはありますか?
「自分でヘアセットをすることがあまりないんですよね。ドラマの役柄に合わせることがほとんどなので、こだわりはないに等しいです。強いて言えば、めっちゃ明るい金髪にしてみたい。今まで一度も金髪にしたことがないので……『彼女はキレイだった』の茶髪が人生でいちばん明るかったのかも」
金髪役、何か来るといいですね……!スキンケアなどはしますか?
「お風呂上がりに化粧水、乳液。時々いただいたパックなども使います。あとは頭皮マッサージと、最近髪の毛が痛んでいるのでヘアオイルでケアもしています。メンズとしては、しっかりしている方じゃないでしょうか。表に出る仕事なので、最低限の清潔感は大事にしています。あとは、乾燥肌ということもあって、ちょっと手を抜いたらパリパリになっちゃう(笑)これからの季節、特にケアを怠らずにいようと思っています」

今回演じた春野優は、どんなキャラクターですか?
「空気を読めたり、人の心に寄り添えたりはしつつも、ちょっと強引なところや執着心にも似た粘り強さがある人物だと感じています。それが若さゆえなのか、それとも春野自身が持っているものなのかまだわからないけれど。一見、子犬系だけれどとても爆発力があり、周りを振り回す一面もあるようなキャラクターですね」
赤楚さん自身と似ている部分はありますか?
「この仕事をどうしてもやりたいと思う気持ち……それ以外はあまり似ていないかも。思ったことをバッと口にすることは僕はあまりなくて、どちらかというと感情抜きにして話すことが多いので。感情で動いてしまう春野とは、真逆かもしれないですね」
そうなんですね。自分のことをよく話してくださる印象を受けたので、ちょっと意外です。
「僕、感情的になると言葉が出てこなくなるんですよ。あとは、あまり感情に振り回されたくないという思いもあります。いかに他人事でいられるか、みないな」
ドライ?無関心?(笑)
「いや、関心はあるんですけどね(笑)ドライ……なんですかね」
それは昔からですか?
「いや、昔はやっぱり、感情に振り回されたり、思うがままに行動してしまうこともありました。それで痛い目を見すぎていますね。自分の気持ちを伝えるのが大事な場面ももちろんあるけれど、それ以外のことであまり争いたくないなと。普段はいかに物事が円滑に進んでいくかしか考えていないかもしれないです」
なるほど。そういったご自身の昔の経験などは、春野を演じるにあたって反映されていたりしますか?
「そうですね、物語が年単位で進むし、春野のキャラクターの変化を見せていきたい。その中で、いちばん最初の春野の若さと青臭い部分は、僕もちょっと経験したこともあるなと感じたりします。今回はオリジナルドラマなので、僕も結末はまだわかっていないし、それが楽しさでもあります。春野はこれからどんどん変わっていくと思うのですが、今以上に春野のことを知って、感じていかないと、表現できないなと。それがとても楽しみです」
まず貧乏学生の春野優を演じるにあたって、何か準備をしましたか?
「贅沢をちょっとやめました(笑)普段なら電車を使うところを歩いてみようとか、空腹でいる時間を増やしてみようとか。とはいえ昨日は高いアイスを3つ買うという贅沢をしちゃったんですけど……」
いつも役作りのために実生活を変えるタイプ?
「そうですね。役柄に近い生活をしていると、現場でもいざという時に役を理解しやすくなります。発する言葉のより奥に隠れている意味も拾っていけているような気がしますね。だから、今は春野優だったらどうするだろう?と、常日頃から考えています」
しんどくならない?(笑)
「しんどいんですよ(苦笑)このやり方以外にいい方法がないか、ずっと模索しています。常にこの辺(頭の後ろあたりを触りながら)に役がまとわりついている感じがあって、他のことに集中できないのが悩みです。作品中は基本的に、映画1本、小説1冊すら観たり読んだりする気力がない。別の物語に入り込めなくなるのは嫌だなと思っています」
そんな中で撮影がスタートしていますが、現場の雰囲気はいかがですか?
「柔らかい雰囲気ですね。江口(のりこ)さんを筆頭に、性格やまとっている雰囲気が柔らかい方が多いです。とても居心地がいい現場だなと初日から感じました。スッと入れていただけた感じ」
江口のりこさんとは初共演ですが、緊張は?
「しました。久々に年上の女性とご一緒ということで、どう接したらいいだろう、どう近づけていけるだろうと。僕が遅めの入りだったんですけど、江口さんには、もう来うへんかと思ったわ〜とか、冗談を言われたり(笑)お芝居をしていても、とても独特な空気感だけどあたたかい。お芝居をしやすいというか、任せてしまっている、いい意味で甘えてしまっていますね」
町田啓太さんとも、久々の共演ですね。
「はい、久しぶりだね、頑張っていこうねという話ははじめにしました。あとは、家電についてとか、枕についてとか、相変わらず生活を豊かにするグッズの話題で盛り上がっています」
江口さん演じる“お金はあるが愛に飢えた孤独な女社長・氷河衛”と、赤楚さん演じる“愛はあるがお金がない貧乏専門学生・春野優”が出会うところから物語はスタートしました。現時点で、お金と愛、ご自身はどちらが大事だと考えますか?
「お金ですよ」
即答ですね。その心は?
「愛も大事だけれど……お金がないとやっぱり生きていけない。僕、アルバイト生活を送っていた時期もあるので、お金の大切さをより味わってきているというのもあります。でも、難しいな。欲しているものは、お金。愛も欲しいとは思いつつ、あんまり愛が溢れても満足しちゃいそうで。愛で満たされたら、それ以上に求めるものってない。僕は満足しちゃったら人生終わりだと思っているので、まだしたくないと思っている部分もあります」
それぞれの“SUPER RICH=幸せのカタチ”について考えさせられるドラマですが、赤楚さんの考える“RICH”とは何でしょうか?
「パッと思い浮かぶイメージは、二子玉川を子犬連れて散歩している家族。そういう完璧ファミリーに、憧れはあります」
10年後、20年後、そういった生活をしていたいですか?
「夢ではありますね(笑)でも、このお仕事ももちろん続けていたい。続けていたいですけど、やっぱりどうなるかわからない職業なので、不安はあります。でも、いろいろな物事にチャレンジはしていきたい。10年、20年経ってこそできる仕事もあるだろうし。今以上に自分の求めているもののレベルに持っていけるようになっていたらいいな」
赤楚さんの活躍がめざましい1年だったと感じています。ご自身で振り返ってみていかがでしょうか?
「今回のこのドラマも含めて、作品にとても恵まれているなと感じています。スタッフ・キャスト含めて素敵な方が本当に多い。毎回毎回、あぁすごくいい現場だなぁと思っていて、それに救われているし、良い出会いのある年だったなという印象です」
では改めて、ドラマへの意気込みをお願いします。
「オリジナルドラマということで久しぶりに先が見えないものをやっている楽しさがあります。経験したことがないものができる気がしていて、未知ですね。今までの作品ももちろん全力でしたが、新たな心での挑戦なので、本気で悩みつつも全力で楽しみたいと思っています」

WHAT IS THE MOST IMPORTANT FOR EIJI AKASO ?
ドラマの台本に添えられたWHAT IS THE MOST IMPORTANT FOR ME…?(僕にとっていちばん大切なことは何?)という言葉。これにまつわり赤楚衛二が赤楚衛二であるための「いちばん大切なこと」をテーマに、7つの質問を投げかけてみた。
お仕事をする上でいちばん大切にしていることは?
「全力で向き合うこと。感謝を忘れないこと」
影響を受けた、転機になったなど、いちばん大切にしている作品は?
「自分が出演した作品はすべて転機にもなり大切なので、いちばんはないです。影響を受けたのは映画『ロッキー』。この筋肉にならなきゃと思って、筋トレに目覚めました」
ご自身のファッションでいちばん大切なことは?
「靴や小物。いちばん見られる場所だからきっちりしておきたいです。腕時計は単純に好きで、舞台終えた記念に自分で買ったものをずっとつけています」
お休みの日を心地よく過ごすためいちばん大切にしていることは?
「家の中を自分の好きなもので染める。マットレスひとつとっても妥協したくないです。おうちを充実させるためにはお金を惜しまないですね」
いちばん大切にしているモノは?
「モノに本当に執着がない。強いてあげるなら、腕時計と革靴くらいかな。他はないです。思い出は心に残っていればいいので、写真とかもあんまり撮らないです」
いちばん大切にしている言葉は?
「人事を尽くして天命を待つ。頑張っていれば、あとは神様が見ていてくれるだろうと。このお仕事もすべて自発的にできるわけでなく、いただいた中で全力でやるものだから、最終的には受け身なところがあります。その中でどれほどできるか向き合っています」
俳優・赤楚衛二にとっていちばん大切なことは?
「悩むこと。今、27歳なのですが、今後も多分いろんなことで悩むと思うんですよ。でも例えば、10年前、17歳の時の苦しみって、今思い出したらめちゃくちゃちっぽけなこと。そう思えるのは、この10年、ちゃんと苦しみに向き合ってきたからなんですよね。そうじゃなかったら、17歳の時の苦しみってもっと大きなものとして残ってしまっていたんだろうなと。だから、今の苦しみがめちゃくちゃ軽くなるくらい、ずっと苦しみ続けることを大事にしたい。苦しんだ方がいいですよね」
Profile

赤楚 衛二
2015年より俳優として本格始動。2017年『仮面ライダービルド』(テレビ朝日)に出演し、一躍脚光を浴びる。2019年には、連続ドラマ単独初主演を務めた2020年『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京)が大ヒット。2021年『彼女はキレイだった』(カンテレ)での活躍も話題になるなど、着実に人気と実力とつける姿に注目。
Information
木曜劇場『SUPER RICH』
毎週木曜22時〜22時54分 フジテレビ系にて放送中。幸せのカタチ=“スーパーリッチ”を追い求めるキャリアウーマンの、ジェットコースターのような波瀾万丈な半生を描く完全オリジナルストーリー。秒で激変!超高速ジェットコースタードラマ。
出演 江口のりこ 赤楚衛二 ほか
Photography TOSHIAKI KITAOKA
Hair & Makeup RUMI HIROSE
Styling TAICHI SUMURA
Model EIJI AKASO
Edit & Text TOKO TOGASHI