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2008年に「muroffice Promotion Planning」を立ち上げ、数多くのファッションブランドのPRやブランディング、プロモーションに携わってきた中室さん。ファッションに興味をもったきっかけはなんだったのだろうか。
 「父親はファッション業界の人間ではありませんが、レジメンタルのタイしか締めないですし、ボタンダウンのシャツしか着ないような人なんです。僕自身も幼い頃からアメリカントラッドの洋服を着せられたりして、少なからず父の影響はあると思います。
 小学校1年生のときに、父の仕事の関係でアントワープに引っ越して、5年生までの4年間をそこで過ごしたんです。アントワープはファッションの発信地ですが、当時はそういう風には感じていませんでした。ただ、いろんな人種の人がそれぞれの文化に根ざした格好をしていたり、ルーベンスの絵をすぐに見ることができたり、ゴッホ美術館にも車でいけるところに住んでいたり、刺激が多かったのは間違いないです。ものを見る視点や価値観がつくられるのに、なにが直接作用しているのか分かりませんが、幼少期から今までにみてきたものは全てつながっているのだと思います」

長年愛用の時計

21歳で販売員をしている時に購入したという、カルティエのタンクフランセーズ。ステンレスを革ベルトに変えていて、着物にもマッチ。

murofficeの立ち上げ以前には、セレクトショップでPRの仕事をしていた中室さんだが、その仕事を選ばれたのはどうしてなのだろうか。
「大学1年生のときにアルバイトをしたのが、ロードバイクや、フォールディングバイクを売っているような自転車屋さんでした。そこでものを売ることの喜びを知り、一番好きだった洋服を、お客様にすすめたり販売したりする仕事につきたいと思い、セレクトショップで販売の仕事を大学4年まで続けました。卒業前に上司からプレスをやらないかと言われ、大学に通いながらプレスの仕事をはじめたんです。プレス業務をしているうちに、バイヤーやMDに言われたものではなく、自分の目で商材を探して、ブランディングをして、PRをしたいと思い、独立し、今の会社を立ち上げたのが27歳のときでした」

“機会さえあれば、着物の文化は もっと広がりを見せるはず。 その機会づくりをしていきたい”

洋服について精通している中室さんだが、日本の文化に興味をもちはじめたのは最近のことだと言う。
「独立していろんなお話をいただくようになり、デニムや眼鏡など、日本が世界でもそのジャンルを牽引している産地に伺う機会が増えていきました。そこで職人さんの仕事をみて、改めて日本の素晴しさを感じました。海外の友人に日本について話をする際に、よくよく考えてみたら、自分自身が日本海をみたことも、金沢に行ったこともなかったんです。日本人の自分が、実は日本のことをよく知らないことに対して違和感があって、この2年間は国内の観光地やものづくりの産地に積極的に訪れるようになりました。いろんなものを見ていくうちに、今まで気にも留めなかったものが素敵に感じるようになりました」

家紋入りの羽織り

「羽織りには家紋の『蔦紋』を入れました。アンサンブルの着物は最近あまりないようですが、セットアップ感覚で着たいと思い選びました」

さらに、和装と洋装の違いや、“#playkimono”を通しての自身の活動について、次のように語ってくれた。
「タキシードやスーツを着る時に、自然と背筋が伸びますが、その感覚は着物にもあります。浴衣は高校の時に初めて仕立ててもらって以来、楽しくなってしまって2年に1度は仕立てています。浴衣を着るときにも、特別感がありますよね。
 “#playkimono”のお話を最初にいただいた時には、自分には何ができるのか、今までやってきたことを応用できるのかとても考えました。今も考えている最中ではあるのですが、このプロジェクトは呉服屋さんや着物の文化を守ろうということが起点になっていて、関わるみなさんの熱量に動かされ、お引き受けした部分が多いにあります。
 洋服は普段からみんなが着ているものなので、手に取ってもらうハードルそのものが低いですが、着物は手に取ってもらうまでのハードルの高さが難しいところだと思います。ただ、僕自身スーツを着たことがなかったのに、だんだんと着られるようになって、慣れてくるとカジュアルに着こなすこともできるようになりました。着物も同じことが言えると思います。また、蝶ネクタイは、少し前はしている人を見かけなかったのに、今では披露宴に呼ばれたら2、3人はしているようになり、すっかり定着しました。蝶ネクタイのようなアイコニックなアイテムが市民権を得られるのであれば、着物や浴衣が今以上に普及していく可能性は充分にあると思います。

印伝のポーチ

「単色で一見シンプルですが、印伝(鹿革に漆で模様付けをしている)によって、絶妙なニュアンスがあるのが気に入って購入しました」

まず興味をもっていただいて、着る人が増えるのが理想ですが、着物を着る機会を先に増やすことも大切です。そういう取り組みにどんどん関わって行けたらいいと思っています。僕自身も着物を仕立てたことをきっかけに、お茶を習おうと思っています。原点回帰という訳ではないですが、着物をはじめとする和の文化は、日本人として知っておくべきことなのかなと思うになりました。今回、“#playkimono”のような機会をつくっていただいたので、僕自身がこの機会を逃さずにライフスタイルに取り入れていきたいなと思います」

カジュアルな草履

「オーストリッチで高価なものなど様々な種類がある中で、初心者らしく嫌みがないものがいいと思い京都の小物屋さんで購入しました」

Photography YUYA SHIMAHARA
Edit & Text YURIKO HORIE

こちらの情報は『CYAN ISSUE 014』に掲載されたものを再編集したものです。

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