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幼少期にモデルとしてデビューして以来、トップクリエイターとともに雑誌、広告など、数多くの仕事をしてきた琉花さん。今年になって、新人モデルの中島セナさんの撮影や、自身の写真展「VOYAGE  2014−2017」の開催、zineの制作など、新たな仕事に挑戦してきた。なぜ今、写真家としての道を歩みはじめたのだろうか。そして、その経緯はどんなものだったのだろうか。

初めて制作したzine zine『VOYAGE』(写真上)と『summer with sena』(写真下)。「製本や封入は友人にも手伝ってもらい、徹夜で作業して出来上がった力作です」 2017年11月1日より、期間限定で、代官山 蔦屋書店にて販売します

「父がフォトグラファーということもあり、小さい頃から写真が身近にある環境でした。父の暗室作業を手伝ったりもしていましたし。手伝うことは自体は楽しかったのですが、幼少期はあまり写真に興味がありませんでした。高校1年生のときに父親からフィルムカメラをもらったことが、写真やカメラに興味を持つきっかけになりました」

 初めて触るフィルムカメラで身近なものを撮影し始め、その後、パリとウィーンに行った際に撮影を行い、持って行った30本のフィルムを撮り切ったという。

「旅で初めて撮った写真を見返してみると、今では撮れないような写真があります。当時は写真を撮り始めたばかりで、すごくフレッシュな感覚で撮影をしていたんだと思います」  

 琉花さんが写真を撮り始めた2012年頃と言えば、すでにスマートフォンが主流になっていた。手間もかかり、技術も必要なフィルムカメラで写真を撮ることにこだわる理由は何なのだろうか。

「気軽に撮れるスマホやデジタルカメラと違って、フィルムは現像するまでどういう写真が撮れているか分からないので、ワクワク感があります。また、デジタルには出せない色や質感も出るので気に入っています」

愛用の「LEICA M6」 「今まで父のものを使っていましたが、最近自分で購入しました。使いこなすのは難しいけど、撮影していてとても楽しいカメラです」

インスピレーションの源について聞いてみる。

「写真を始めた当初、インスピレーション源になるものは特になく、今では100冊くらい持っている写真集も、全く持っていませんでした。父の写真もちゃんと見たことがありませんでしたし。でも最近気づいて驚いたのですが、父が昔撮った写真と同じ場所(ウィーンの郊外)で、構図もそっくりな写真を偶然私が撮っていたんです! 知らず知らずのうちに影響を受けているのかもしれませんね」

 初めてパリ、ウィーンを旅した後も、ロンドン、ポートランド、ロス、ニューヨーク、香港、台湾などを旅しながら写真を撮った。あらかじめ写真を撮る場所は決めず、琴線に触れたものを被写体にするのだそうだ。

「旅から帰ってくるとプリントするのですが、ファイルに整理していたわけでもないので、どんどんと写真が溜まっていきました。それを見て、ぼんやりといつかは展示をしてみたいなという気持ちが生まれたような気がします」

“モデルとして、写真家として、 境界を作らずに表現し続けたい”

写真展が実現することになった大きなキッカケは事務所に新しく所属した中島セナさんを撮った写真だったという。

「最初は撮った写真をInstagramに細々とUPしていたのですが、フォロワーの方から写真に関する感想を頂いたり、現場でカメラマンの方から評価して頂く内に、事務所の人と「10代の内にやりたいよね!」と話すようになりました。私が人物撮影にトライしたいと言っていたので、事務所の人に「新人のセナちゃんを撮ってみたら?」と撮影する機会を頂けて……。セナちゃんにとっても私にとっても初めての撮影、とても緊張しましたが、作品をInstagramにUPした瞬間から大反響だったみたいで。事務所に問合せが殺到していたと聞いて、すごく嬉しかったです。1枚の写真がもつ影響力が写真展の開催へと近づけてくれたと感じました」

フォトグラファーとしての仕事 新人モデルの中島セナさんの撮影を担当。「波長が合って、お互いに緊張せずに臨めました。これからも、彼女のことを撮り続けていきたいです」

ついに実現することになった写真展。コンセプトとなった『VOYAGE』はどのように決まったのだろうか。

「旅の写真がほとんどを占めていたので、展示会のタイトルは“Voyage”しかないと思っていました。展示方法や額装については、ギリギリまで考えて決めました。挙げればきりがないですが、一番大変だったのはプリント。始めは色の出し方が分からなくて、紙を何回も買い直して、プリントを繰り返しました。パソコンのモニターで見る色と実際にプリントした色とでは、全然見え方が違いました。父にアドバイスをもらい、何度か繰り返すうちに紙も決まり、途中から「こうしたらこういう色になる」というようなコツと感覚が掴めるようになりました。zineの制作やプリント、額装など、すべてのことが同時進行だったので、余裕はありませんでしたが、家族や友人など、本当にいろんな面で助けてもらい、準備を進めていくことができました。オープニングの前夜にすべてが完成し、出来上がった会場を見たときの気持ちは今でも忘れられません。あと、この展示をきっかけに、写真の仕事をいくつかいただいていて、すごくワクワクしています。モデルという表現のお仕事とともに、これからも作品を撮り続けていきたいと思います」

水谷吉法さんの写真集 「書店で写真集を見てから、ずっと気になっている写真家の水谷吉法さん。中でも『HANON』と『CO LORS』は印象に残っています」

Photography YUYA SHIMAHARA
Edit & Text SATORU SUZUKI YURIKO HORIE

こちらの情報は「CYAN ISSUE 015」に掲載されたものを再編集したものです。

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