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ー吸い込まれそうに美しい色。どこか色っぽさを感じるフォルム。
 まるで生物のようにしなやかな印象を見る人に与える高橋漠さんの作品、そして立体的なガラスの空間の中に独自の世界を作り上げる和田朋子さん。
互いにガラス作家として制作・展示などの活動を続けている2人によってグラスウェアブランド『TOUMEI』が立ち上げられた。シンプルながらもアートのような佇まいを見せるデザインと、私たちが知り得ることばで表現するには難しいほどの絶妙な色合い。この2つの要素を持ち合わせながらも、暮らしの中に溶け込む対応力を見せるTOUMEIのプロダクト。

“透明”だからこそ美しく、尊い。日々の発見や学びを拾い上げカタチにしていく

 のちに多摩美術大学で出会うことになる2人だが、性格や生い立ちはまったく異なるものだったという。
「何かを作ってばかりいる子どもでした。物心ついたころから”自分だけのオリジナルのものが作りたい”という思いが強くて、姉に“一緒に何か作ろうよ〜!”とせがんでは、セロハンテープなど身近な文房具を使って工作していましたね」と和田さん。高橋さんも、粘土で作ったキャラクター同士を戦わせてヒーローごっこをしているような少年だった。
 そして、2人は多摩美術大学の工芸学科に入学する。1年次は陶やガラスについて学び、2年目専攻に分かれているのだという。もちろん2人が選んだのはガラスだった。
「旅行した際には必ず小さなガラスの置物をお土産に選んでいました」と話す和田さんは、幼いころに感じたガラスに対する好奇心や、ワクワクする感覚が今でもずっと続いているのだとか。そして、高橋さんは「ガラスという素材の扱い方や透明なものの不思議さ」に魅力を感じたのだという。

TOUMEIの花器 滑らかな曲線が、艶やかに輝くTOUMEIの花器たち。アートのような佇まいながらも、生ける花の美しさを際立たせる

 知れば知るほどに新たな“発見”や“学び”を与えてくれるガラスにどんどん夢中になっていった2人。大学卒業後はアルバイトをしながら、各々ガラス作家としての活動を開始。そんな中で、高橋さんは”ガラスで作品を作る理由”について悩んでいた。
「和田さんはどちらかというと天才タイプなんですよ。今でもなお、幼少期のころにお姉さんとモノづくりをしていたような感覚で制作を続けていて、理屈っぽい僕とは全然違うんです。僕は“自分らしさを表現しよう”ということを考えていくと、ガラスで作ることがしっくり来なくなってしまい悩んでいました。だから、自分らしさや自己表現を一旦棚に上げて“ガラスと真正面から向き合うことで、それが結果的に“自分らしさ”になったように思います」

アトリエの窓辺の風景 アトリエの一角で、静かに存在感を放っている花器。窓からの光の入り具合によって花器の表情がころころと変わる

そして2016年、2人は『TOUMEI』を立ち上げる。
「結婚を機に僕の故郷の福岡県宗像市に帰って、自分たちの窯を持つことにしたんです」と高橋さん。でも実は、当時からTOUMEIの立ち上げを考えていたわけではなかったのだという。
「活動拠点を移し、これからガラス作家としてどう活動していくのかを考えている時期だったんです。そんな時に知り合いから“やりたいことを続けるには、それだけでは成り立たないよ”ということばを投げかけられて。頭では何となく理解したつもりだったのですが、より真剣に経済面や将来について考えるようになりました」。それからほどなくして、“暮らしや社会の中でより機能するグラスウェアブランド”として『TOUMEI』が立ち上げられた。「TOUMEIは、花器やテーブルウェアなどの日常の中で使っていただくアイテムを制作しています。だから、使いやすいのはもちろん大前提。その範囲で“見たことのないようなデザイン”というものを表現しています」。ガラスそのものの美しさを際立たせることを考えると、おのずと美しいものが完成するだという。

和田朋子さんのアートワーク 立体的なガラスの中に、小さな世界を作り上げる和田さんの作品。まるで万華鏡をのぞいているかのような錯覚に陥る。Photo : Tomoko Wada

デザイン以外にも注目したいのが、その美しい色。
「自分たちで成分を調合してガラスに着色し、オリジナルの色ガラスとして製品を生み出しています。手間を要する方法なのですが、そこを敢えてやっていこうと。色ガラスそのものを溶かすことで他には無い表情が生まれ、それがTOUMEIの個性にもなっているんじゃないかなと思います」

高橋 漠さんのアートワーク グラフィカルなフォルムで、圧倒的な存在感を放つ高橋さんの作品。くもりガラスのやさしい質感と軽やかな印象を併せ持つ Photo : Baku Takahashi

最後にTOUMEIとしての今後の展望についてうかがった。
「これまではグラスや花器がメインだったのですが、証明作りにも取り組み始めたんです。これを皮切りに、インテリアアイテムをもっと増やしていこうと考えています。暮らし全般をガラス=TOUMEIで彩れるようになったらいいなと思ってます」

Photography KIYOSHI NAKAMURA
Edit & Text ERIKA TERAO
Web Edit KIKUNO MINOURA

こちらの情報は『CYAN ISSUE 019』に掲載されたものを再編集したものです。

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